54 ページ6
陽気な人だなあ。
勢いに押されそうにもなるけど。
七松くんが、天女と呼ばず名前を聞いてくれたのは“ご褒美”のおかげだと思う。
医務室にて休養中のある日、土井先生が尋ねて来た。
『学園長先生が、天女様に何か褒美を与えたいとおっしゃっていまして』
何が良いですか、と問われ、ひとしきり考え込んだ私は口を開いた。
『“天女”って呼ぶのを控えてもらうことってできますか?』
土井先生は怪訝な顔をしていた気がする。
『……構いませんが、それで良いのですか』
『十分です』
だって呼び方を変えるって、結構難しいんじゃないかな。
小松田さんもしばらくは、“て、あ、蛍火さん”って呼んでたし。
そんなやり取りが成された翌日、学園長先生が了承してくださったと、山田先生から教えていただいた。
休養 in 医務室、思い返せば結構色んな事があった。
「で、蛍火さんの用って何だ?」
七松くんは首を傾けた。
「お礼をお伝えしたくて」
「お礼?」
「乱太郎くんから伺ったんですが、私の槍を覆っていた岩を壊してくれたそうで」
「ああ、そのことか」
何故槍がケースに入っておらず、岩で覆われていたのか。
全くもって意味不明な事態なのだが、さておき。
「おかげさまで、妖を倒すことができましたし、私も大怪我を負わずに済みました。本当にありがとうございました」
私はペコリと頭を下げた。
1,2秒ほどで姿勢を直せば、七松くんの笑顔が視界に入る。
「なに、気にするな! 大したことはしてないからな!」
謙遜も誇張も感じない、からっとした言葉。
素手で岩を破壊することが、大したことじゃないとは。
身体、頑丈すぎませんかね。
いいなあ。
「それに、礼を言うのは私たちの方だ」
「へ?」
変な声が出たけど。
七松くんは気にすることなく話を続ける。
「忍術学園が壊れないように、戦ってくれたんだろ?」
「……どうでしょう、夢中だったもので」
妖を倒してくれた、なら素直に頷く。現にそれに対してのご褒美はもらったし。
ただ、七松くんの問いはなんか誤魔化したくなった。
だから苦笑して流そうとした、のだが。
「無意識ならそれだけ学園を大切にしてくれてるって事だろ?」
面食らった。
「私の経験上、何かに熱中しても大切な事は忘れないからな!」
七松くんはそう言ってのける。
うん、お手上げだ。
127人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「忍たま」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
kanayamamoto112(プロフ) - 水の術者の67話どのようなお話なのか凄く楽しみです。水の術者主人公君の武器は見つかったのか気になります。 (7月1日 10時) (レス) id: 763c9aa7d5 (このIDを非表示/違反報告)
kanayamamoto112(プロフ) - 水の術者主人公君と火の術者ヒロインちゃんの合流楽しみです。次は2人のうちどちらが登場するのか楽しみです。 (7月1日 9時) (レス) id: 763c9aa7d5 (このIDを非表示/違反報告)
kanayamamoto112(プロフ) - 待ってました。水の術者主人公君とタソガレドキの押都長烈さんの心理戦楽しみです。続き楽しみです。 (7月1日 1時) (レス) id: 763c9aa7d5 (このIDを非表示/違反報告)
kanayamamoto112(プロフ) - 続き楽しみです。 (6月30日 16時) (レス) id: 763c9aa7d5 (このIDを非表示/違反報告)
kanayamamoto112(プロフ) - 凄く面白いですし展開が楽しみでドキドキしてます。作者さん体調には気をつけてください。 (2023年2月5日 23時) (レス) id: 763c9aa7d5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ノート角 | 作成日時:2019年11月19日 15時