96 月夜 ページ47
清水 蒼真side
バシャバシャと、水を掻き分けて川から上がる。
渇いた地面に足を着いて、大きく息を吐いた。
これでも術師の端くれだ。このまま術を利用して水の上を歩き続けることは可能であったが、
(……疲れた)
そんな気は起きなかった。
やはり、自身の武器なしで妖を倒すというのは中々に辛い。
20本以上集めたはずの刀は全て破壊してしまい、今は丸腰。
ほぼ無傷なこと、妖を仕留められたことを踏まえれば、上出来だと思うが。
足を引きずるように歩いて、木の根本に腰を下ろす。
出城から離れるため、谷底の川沿いに移動していたらいつの間にか辺りは鬱蒼と繁る木々ばかり。
日も落ちてしまい、視界は悪い。
ただ幸いなことに、月明かりがほのかに辺りを照らしてくれていた。
(それにしても……些か強すぎやしないか)
こちらに来てから妖と交戦したのは、これで2回目。
いずれも元の世界の平均的な妖より強い。特に今回はそれが顕著だった。
何せ所持していた刀を全て失ったのだ。
以前、専用武器なしで戦った時に使用した本数を目安として集めた筈なのだが、余剰分さえも使いきった。
困ったものだ。
俺は腕を川の方へ伸ばす。
流れに背いて水面が揺らめく、と、風呂敷包みが立て続けに2つ、川から勢いよく吐き出された。
綺麗に放物線を描いて飛んで来たそれらを受け止める。
運搬を依頼されていた木箱はーー水中に保持しておくか。
包みを探れば風呂敷も中身も、濡れていない。
助かった。
あの戦闘の中、こちらの術を維持できたことは嬉しい予想外だ。
正直、紛失しても仕方ないと諦めていた。
念の為中身を確認しようと結び目に手をかけ、ふと、右横に顔を向ける。
殺意はないが鋭く、しかし静かな気配。
暗闇から現れたのは忍だった。断言はできないが、装束からしてタソガレドキ忍者。
「こんばんは」
低い声が耳に届く。
布製か紙製か。奇妙な面を付けており、顔は全くわからない。
「こんばんは……。どちら様ですか」
一先ず聞いてみる。
「タソガレドキ忍軍黒鷲隊 小頭の押都長烈だ」
押しつ押されつ。
……偽名だろうか。いや、名前に突っ込む時点で野暮だな。
「本名だよ」
「……失礼しました」
顔に出ていたらしい。
自分はあまり心境を悟られないのだが、さすがは忍者。油断できないものだ。
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kanayamamoto112(プロフ) - 水の術者の67話どのようなお話なのか凄く楽しみです。水の術者主人公君の武器は見つかったのか気になります。 (7月1日 10時) (
レス) id: 763c9aa7d5 (このIDを非表示/違反報告)
kanayamamoto112(プロフ) - 水の術者主人公君と火の術者ヒロインちゃんの合流楽しみです。次は2人のうちどちらが登場するのか楽しみです。 (7月1日 9時) (レス) id: 763c9aa7d5 (このIDを非表示/違反報告)
kanayamamoto112(プロフ) - 待ってました。水の術者主人公君とタソガレドキの押都長烈さんの心理戦楽しみです。続き楽しみです。 (7月1日 1時) (レス) id: 763c9aa7d5 (このIDを非表示/違反報告)
kanayamamoto112(プロフ) - 続き楽しみです。 (6月30日 16時) (レス) id: 763c9aa7d5 (このIDを非表示/違反報告)
kanayamamoto112(プロフ) - 凄く面白いですし展開が楽しみでドキドキしてます。作者さん体調には気をつけてください。 (2023年2月5日 23時) (レス) id: 763c9aa7d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ノート角 | 作成日時：2019年11月19日 15時
