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弾かれたように駆け出す先生方の後を追う。
声がしたのは屋敷の中、多分下級生が休んでいる部屋の辺り……、



「どうした!? ……ん?」



一番始めに駆け寄った山田先生が、目を見開いた。

追いついた僕たちも部屋を覗く。



「あーん、ごめんなさい〜」



部屋の入り口付近で倒れている喜三太。その手には、恐らくあの壺。
そして、



「う゛ーー」
「早く取ってくれ〜!」



部屋の奥に座り込む作兵衛、藤内、久作、伝七……と、その身体を這い回るナメクジ……。


状況を把握したらしい山田先生がため息を吐きながら、喜三太を起こした。



「喜三太、一体何をしたんだ?」

「さっきまで外にいたよね?」



乱太郎が喜三太の横に屈む。

僕や他の忍たまは、ナメクジを集め始めた。
うーん、すごい数。



「乱太郎と伏木蔵に会ってからこっちに戻ってきたんだけど。部屋に入ろうとした時に、目の前に矢が飛んできて……ビックリして転んじゃった」



それでナメさんたちが……と萎れる喜三太が気の毒になる。


あれ、矢が飛んできたってーー、



「山田先生」



土井先生が見つめるのは、部屋の入り口横の柱。



「これは、矢文か……」



矢柄(やがら)に結ばれていたのであろう文を解いて、先生方が目を通す。

ナメクジを喜三太の元に帰して、僕もその場に歩み寄る。
土井先生が乱太郎に渡したそれを、横から見せてもらった。



〈化け物の討伐は成功した模様。天女様に傷は無いようお見受けする〉



文末には雑渡さんの似顔絵が記されていた。

ホッと乱太郎、伏木蔵の顔が綻ぶ。



「……よかった」

「……うん」



僕は2人の頭を撫でた。
くすぐったそうに笑っている。



「捜索に出ていた(みな)が、もう直戻る筈だ。そこで今後の方針を決定しよう」



そう話す山田先生や、頷く土井先生の表情は、未だに険しいままだった。

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kanayamamoto112(プロフ) - 水の術者の67話どのようなお話なのか凄く楽しみです。水の術者主人公君の武器は見つかったのか気になります。 (7月1日 10時) (レス) id: 763c9aa7d5 (このIDを非表示/違反報告)
kanayamamoto112(プロフ) - 水の術者主人公君と火の術者ヒロインちゃんの合流楽しみです。次は2人のうちどちらが登場するのか楽しみです。 (7月1日 9時) (レス) id: 763c9aa7d5 (このIDを非表示/違反報告)
kanayamamoto112(プロフ) - 待ってました。水の術者主人公君とタソガレドキの押都長烈さんの心理戦楽しみです。続き楽しみです。 (7月1日 1時) (レス) id: 763c9aa7d5 (このIDを非表示/違反報告)
kanayamamoto112(プロフ) - 続き楽しみです。 (6月30日 16時) (レス) id: 763c9aa7d5 (このIDを非表示/違反報告)
kanayamamoto112(プロフ) - 凄く面白いですし展開が楽しみでドキドキしてます。作者さん体調には気をつけてください。 (2023年2月5日 23時) (レス) id: 763c9aa7d5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ノート角 | 作成日時:2019年11月19日 15時

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