73 本能 ページ24
(……なんか、罠にかけてるみたいな)
荷物を取ってくると、離れていく清水さんの背を見つめる。
嘘をついているわけじゃないけれど、騙しているような、この感じ。
天女……天人の可能性があるのだから、仕方のないこと。
だけど、この人は私たちを助けようとしてくれている。
一度そう思ってしまうと、もやもやした気持ちがこみ上げて消えない。
(それに、あかねさんの友だちかもしれないし…)
「……行くか」
戻ってきた清水さんが言った。
持ち物に風呂敷包みが増えている。
「は〜い」
「はい…」
その声に応じて、すっきりしない気持ちを振り払うように、私は歩き出した。
※
蛍火 あかねside
麗らかな日和、素晴らしいコンディション、整えてもらった髪。
本来なら気分上々であっただろう午後。
私の心には暗雲が立ち込めていた。
……言い過ぎかな。
元凶は手元の書類。
小松田さんが届ける筈だったのだが。
諸々あって忘れた上に、片付けなければならない仕事が他にもあるとのことで、私が代わりに行くことになった。
それは別にいい。
困るのは、届け先が“生物委員会”ってこと。
正確には、飼育小屋に行かなきゃいけないこと。
『今は飼育小屋にいると思うから、すぐ会えるはずだよ〜！ 』
ほのぼのした笑顔で教えてくれた小松田さんに対し、私のテンションは急降下。
傍目にも分かったらしく、すごい心配させてしまった。すみません小松田さん。
(……飼ってるのって毒虫が主だって言ってたっけ)
じゃあ大丈夫かな。
虫って表情とか分かりにくいもんね。
うん。さっさと渡して帰ろう。
※
(わーお……)
剥き出しの牙、低い唸り声。鋭い眼光。
すぐさま動けるように身を屈めて、耳を後ろに倒して。
でも尾は足の間に挟むように丸まって。
威嚇と怯えの最上形態とも言うべきか。
そうやって2匹の……犬たちに睨まれて、私はため息を漏らす。
動物がいたら敵意を向けられる事は案の定だったけど、それがから犬とは意外や意外。
せいぜい、兎とか鳥とかだと思ったのに。
(……うーん、こうなると)
視線を犬の奥に移す。
当然ながら、生物委員である忍たまたちの表情は酷く強張っていた。
(あの子すごいな…。首に蛇が巻きついてる)
その蛇も怯えて、牙を剥きながら忍たまの影に身を潜めていたけれど。
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kanayamamoto112(プロフ) - 水の術者の67話どのようなお話なのか凄く楽しみです。水の術者主人公君の武器は見つかったのか気になります。 (7月1日 10時) (
レス) id: 763c9aa7d5 (このIDを非表示/違反報告)
kanayamamoto112(プロフ) - 水の術者主人公君と火の術者ヒロインちゃんの合流楽しみです。次は2人のうちどちらが登場するのか楽しみです。 (7月1日 9時) (レス) id: 763c9aa7d5 (このIDを非表示/違反報告)
kanayamamoto112(プロフ) - 待ってました。水の術者主人公君とタソガレドキの押都長烈さんの心理戦楽しみです。続き楽しみです。 (7月1日 1時) (レス) id: 763c9aa7d5 (このIDを非表示/違反報告)
kanayamamoto112(プロフ) - 続き楽しみです。 (6月30日 16時) (レス) id: 763c9aa7d5 (このIDを非表示/違反報告)
kanayamamoto112(プロフ) - 凄く面白いですし展開が楽しみでドキドキしてます。作者さん体調には気をつけてください。 (2023年2月5日 23時) (レス) id: 763c9aa7d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ノート角 | 作成日時：2019年11月19日 15時
