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それからドタドタと物凄い勢いで屋敷内を走る音がした。そしてその音はだんだんと近づいてくる。

そしてバンッ!という効果音と共に扉が開いた。



「っA!」



恋柱様だった。若草色と桃色の髪を振りかざしながら走って来たことが窺える。息は上がり顔は真っ赤だ。

恋柱様は目にいっぱいの涙を溜めてAが何か言う前に力強く抱き締めた。

A、A…と泣きながらAの名前を呼んでいた。
Aも嬉しそうに恋柱様を抱き締め返した。


それからすぐに蛇柱様も現れた。
他の者には目もくれずAに体調はどうだ?怪我は痛まないか?と質問攻めにした。

でも蛇柱様の瞳にもうっすらと涙が滲んでいた。きっとこの人もAの目覚めを心からの喜ぶ人の一人なんだ。



その場はまるで陽だまりに包まれたみたいに暖かく優しい空気が流れていた。皆んながきらきらとした涙を零して誰かの生を歓喜する。
なんて素敵な世界なんだろう。


























その日の夜。
なかなか寝付くことができなくて、取り敢えず水を飲みに台所に向かった。


その道中、Aの病室の前を通り過ぎた。
Aの部屋からうっすらと明かりが零れていた。

あれ?もう寝ている時間なのに何で明かりがついているんだろう、そう思ってAの病室の前に立ち止まった。

ほんの少しだけ扉が開いていた。その木枝くらいの細い隙間から中を少し覗いて見た。



ヒュッと、息が詰まった。

だって、そこには。
見慣れた姿があったから。
炭治郎。貴方は。何故、Aの部屋に…?



「A…」



はっきりとは聞こえないけど、二人が話している内容は何となく聞くことができた。
これ以上聞いてはいけないと頭の中でサイレンが鳴り響く。でも、足が動かない。

聞きたくない。聞いてしまったら私は…。
そう思っても、好奇心に逆らえない。


身体中が汗ばむ。拳を握り締める。ほんの少しだけ足が震える。



「…俺、Aのことが……好きなんだ。」



バリン。
そんな効果音と共に私の中で何かが弾け飛んだ。震えが止まらない。目頭が熱くなる。

嫌よ嫌。認めたくない。認めたくない。
私は、私は…。



___これは、きっと。初恋が砕け散った音だ。

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hikari - この作品、めちゃくちゃ面白いです! (2022年4月24日 19時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
美咲 - もし作ることができれば、『<番外編>』を、作ってほしいです。 できますか? (2022年4月7日 17時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
若菜 - 見ていて、悲しくなって、泣きそうになりました。素晴らしい作品ですね。 (2022年3月13日 15時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
琴音 - 切ないところもあったけれど、キュンキュンしました!ありがとうございました🙇 (2022年3月12日 17時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうな(プロフ) - コメント失礼いたします。とても切なく、それでもあったかいお話で感動しました。同時に、このお話の夢主目線のお話も見てみたいなと思いました。もしお時間があり、いいなと思っていただけたらそんなお話も作っていただけたら幸いです。 (2020年11月3日 21時) (レス) id: 51a3f09150 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白霞 | 作成日時:2020年5月30日 19時

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