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数日後、彼女が蝶屋敷に足を運んだ。彼女の師範である恋柱様と一緒に。
屋敷の蝶々達も彼女のことを歓迎するように舞い踊っていた。数もいつもより多い気がする。
彼女は私と目が合うとにっこりと柔く微笑んだ。凄く凄く綺麗な子だと思った。
陽光を浴びて真っ直ぐな笑みを湛える彼女は綺麗だった。
師範やアオイとはまだ違った美しさ。その美しさに、柄にもなく目を奪われた。
「はじめまして…じゃないですね。お久しぶりです。
恋柱 ・ 甘露寺蜜璃の継子の甘露寺Aです。よろしくお願いします。」
彼女___Aは優しい笑みのままそう自己紹介をした。
花の蜜のような甘く蕩ける香りが僅かにした。
「私は蟲柱 ・ 胡蝶しのぶの継子の栗花落カナヲ。よろしく。」
淡々と私も返した。師範にもきちんと自己紹介はしなさい、と教えられていたから。
甘露寺という姓が同じだったからてっきり姉妹かと思ったけれど風貌が全く違う。
恋柱様は桃色から下にかけて若草色になる、まるで桜餅のような奇抜な髪なのに対し、Aは闇よりも純度の高い漆の髪。
瞳も恋柱様は淡い若草色なのに対してAは牡丹のような透明感のある紫紅色だった。
何処となく、髪も瞳も私と似ている色だと思った。
そして年齢も関係しているのかも知れないけれど身長も差がある。多分二人は血が繋がっているわけじゃない。
きっとAには何らかの事情があり甘露寺という姓を名乗っていることを察した。
もしかしたら、私と同じ境遇なのかもしれない。
それから師範の指示でAと手合わせすることになった。
それぞれ木刀を構えて相手を見据える。
「宜しくお願いします、栗花落さん。」
Aは楽しそうに笑ってそう言った。
恋柱様が言っていたことだが、継子同士で手合わせすることを楽しみにしていたみたい。
私はこくりと頷いた。
「それでは、始め!」
師範の声を合図として私達は互いに向かった。
木刀が打ち合う無機質な音だけが聞こえる。
恋柱様は素敵だわぁ、と手を頬に添えていた。
Aは本当に楽しそうに、だけど真剣な瞳をして木刀を振るった。
時折流れる汗が宝石のように煌めいていた。
まるで宝石の欠片が散らばる瞬間のような幻想的な様子に見えた。
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hikari - この作品、めちゃくちゃ面白いです! (2022年4月24日 19時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
美咲 - もし作ることができれば、『<番外編>』を、作ってほしいです。 できますか? (2022年4月7日 17時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
若菜 - 見ていて、悲しくなって、泣きそうになりました。素晴らしい作品ですね。 (2022年3月13日 15時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
琴音 - 切ないところもあったけれど、キュンキュンしました!ありがとうございました🙇 (2022年3月12日 17時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうな(プロフ) - コメント失礼いたします。とても切なく、それでもあったかいお話で感動しました。同時に、このお話の夢主目線のお話も見てみたいなと思いました。もしお時間があり、いいなと思っていただけたらそんなお話も作っていただけたら幸いです。 (2020年11月3日 21時) (レス) id: 51a3f09150 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白霞 | 作成日時:2020年5月30日 19時