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それから恋柱様はAに沢山のことを教えていった。
自分のこと、蛇柱様のこと、鬼殺隊のこと、これから此処で暮らすこと、貴方は私の妹だということ。
沢山沢山教えてやった。Aは唖然としたような表情で恋柱様のことを見ていた。
どうすれば良いのかきっとわからないのだろう。
それもそのはず。この子は誰かから愛情を受け取ったことがなかったのだから。
恋柱様がAをお風呂に入れてやった時に気がついた。
Aの身体は傷や痣だらけなことに。
それを見て何となくだがAの今までの状況を察した。多分、この子は親から大切にされなかったんだわ…。
いつもは天真爛漫で笑顔を振り撒く恋柱様も苦虫を噛み潰したような表情になった。
酷い人達もいるものね…。
そしてこの傷や痣に何も感心を示さないAを見て、親から与えて貰えなかった分、私がこの子に愛を注ぐのよ!と一人でひっそりと誓った。
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甘露寺邸でAが暮らし始めてから随分と月日が流れた。
Aは更に美しく可憐に成長した。蛇柱様が変な虫が寄って来ないか心配するほどに。
そして心も大きく成長した。恋柱様からたっぷりの愛情を注がれ、蛇柱様からも沢山可愛がられ育ったAは、砕けた心のピースが少しずつはまっていった。
甘露寺邸に来た当初は何にも反応を示さず本物のお人形さんみたいだったのが嘘のように、花が綻ぶような笑みを見せてくれるようにさえなった。
蜜璃姉さん、蜜璃姉さんと恋柱様の後を追うようになった。恋柱様の任務や鍛錬以外の時間はほとんど一緒に過ごしていた。
時折菓子を持って蛇柱様が甘露寺邸を訪れると伊黒さん!と笑顔で出迎えるようになった。
彼はAのことをまるで本当の妹のように可愛がっていた。だからこそ、自分の訪問に花のような笑顔を向けてくれたことに心からの幸せを感じていた。
生気を取り戻し、明るく笑うようになったAを見て、恋柱様と蛇柱様が二人ひっそり涙していたことを、Aは知らない。
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hikari - この作品、めちゃくちゃ面白いです! (2022年4月24日 19時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
美咲 - もし作ることができれば、『<番外編>』を、作ってほしいです。 できますか? (2022年4月7日 17時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
若菜 - 見ていて、悲しくなって、泣きそうになりました。素晴らしい作品ですね。 (2022年3月13日 15時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
琴音 - 切ないところもあったけれど、キュンキュンしました!ありがとうございました🙇 (2022年3月12日 17時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうな(プロフ) - コメント失礼いたします。とても切なく、それでもあったかいお話で感動しました。同時に、このお話の夢主目線のお話も見てみたいなと思いました。もしお時間があり、いいなと思っていただけたらそんなお話も作っていただけたら幸いです。 (2020年11月3日 21時) (レス) id: 51a3f09150 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白霞 | 作成日時:2020年5月30日 19時