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翌日には善逸が目を覚ました。善逸の生還に皆んなはわんわん泣いていた。

でもAと炭治郎と伊之助はまだ目覚めない。一日、また一日と時間が流れても三人は目覚めない。

皆んなが不安に駆られて仕方がなかった。



そんなある日、私がAの部屋の花瓶を取り替えに行った時。



「……恋柱様……」



Aのベッドの傍らに先客が訪れていた。恋柱様だ。

恋柱様は毎日毎日Aの元を訪れては手を握ってA、Aと声を掛けている。
その姿は今にも泣き出してしまいそうなくらい不安に塗り固められたものだった。



「…あ、しのぶちゃんの…。カナヲちゃん、よね?」



にこにこと優しい笑みを浮かべているものの、それが心からの笑顔でないことは一瞬で見抜けた。

本当に本当にAのことを心配しているのだろう。



「いつもAから沢山カナヲちゃんのお話を聞くの。この子と仲良くしてくれてありがとう。」



柔い笑みはやはり不安の色を帯びていて、それが見るに耐えないものだった。



「あ…こちらこそ、ありがとう、ございます…」



ふふ、そんなところに立ってないでこっちに来てお話しましょうよ。
恋柱様はそう言って私を手招きした。

恐る恐る恋柱様の横まで足を運ぶと、恋柱様の隣に腰を下ろした。



「…カナヲちゃんは、Aのこと、どれくらい知ってる?」



Aの髪を撫でながら恋柱様は私に問うた。

どれくらい。どれくらい…。
基準がわからず黙りこくってるいるとちょっと分かりにくかったわよね、と恋柱様がフォローしてくれてにこりと微笑んだ。

その笑顔が記憶の中のAの笑顔と重なった。



「…Aの過去のこととか、どうして鬼殺隊に入ったのかとか。そういう類のことはAから聞いたことがあるかしら?」



私はふるふると首を横に振った。私達は過去のことなどについては話したことがなかったから。

恋柱様は瞳に薄い影を落とし、そしてゆっくりと若草色の瞳を閉じた。



「そう…。ねえ、カナヲちゃん。
少しだけ、聞いてくれるしら?」



___この子の、私の妹の過去を。

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hikari - この作品、めちゃくちゃ面白いです! (2022年4月24日 19時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
美咲 - もし作ることができれば、『<番外編>』を、作ってほしいです。 できますか? (2022年4月7日 17時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
若菜 - 見ていて、悲しくなって、泣きそうになりました。素晴らしい作品ですね。 (2022年3月13日 15時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
琴音 - 切ないところもあったけれど、キュンキュンしました!ありがとうございました🙇 (2022年3月12日 17時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうな(プロフ) - コメント失礼いたします。とても切なく、それでもあったかいお話で感動しました。同時に、このお話の夢主目線のお話も見てみたいなと思いました。もしお時間があり、いいなと思っていただけたらそんなお話も作っていただけたら幸いです。 (2020年11月3日 21時) (レス) id: 51a3f09150 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白霞 | 作成日時:2020年5月30日 19時

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