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その日からAが蝶屋敷に訪れることが増えた。私もいつからか、その日を心待ちにするようになった。
Aは持ち前の明るさと優しさですぐに蝶屋敷の皆んなと仲良くなった。
アオイと洗濯物を一緒に干したりお料理をしたりするする姿を度々見かけるようになった。
なほたちと追いかけっこをする姿もよく見る。
Aは薬学に興味があるらしく、師範に薬や毒のことについて教えて貰っていた。
私とは、縁側に座って一緒に蝶々を眺めたりシャボン玉をしたりした。もちろん手合わせも沢山した。Aから学べることは沢山あった。
「カナヲ!」
今日もAがやって来る。あの綺麗な笑顔を浮かべて。
最初は“栗花落さん”と呼ばれていたけれど何だか違和感があって、私から名前で呼んで欲しいとお願いした。
Aは吃驚していたけれど嬉しい!じゃあ私のこともAって呼んでね!と喜んでくれた。
「今日も手合わせお願いできる?」
「うん。」
Aといるときは自然と銅貨を投げなくても言葉が出るようになった。スラスラ…とまではいかないけれど、当たり前のように口から言葉が紡がれる。まるで別の人格でも乗り移ったみたいに。
そのことを師範に話したら師範は嬉しそうに良かったですね、と言ってくれた。目にはほんの少しの涙を浮かべていた。
アオイもそのことをまるで自分のことのように喜んでくれた。Aに感謝しなくちゃね、と。
いつも気丈に振る舞い眉を釣り上げキビキビと働くアオイのあんなに柔らかい笑顔を見れたことが、心の底から嬉しかった。
Aの存在で少しずつ、自分が変わっていくのがわかった。
「あ、そう言えば蝶屋敷に炭治郎と善逸と伊之助いるでしょ?善逸が薬を飲みたがらないってアオイが溜め息ついてた。」
ふふっと笑いながらAはそう言った。
Aは他の同期とも仲が良い。特に炭治郎、善逸、伊之助とは一度合同任務があったようで仲良くなったそう。
そう言えばあの三人は機能回復訓練にいたな。まあ一度も負けていないけど。
そのことを伝えるとAはあははっ、と笑った。やっぱりカナヲには勝てないかー、と悪戯っ子のような笑みを零していた。
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hikari - この作品、めちゃくちゃ面白いです! (2022年4月24日 19時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
美咲 - もし作ることができれば、『<番外編>』を、作ってほしいです。 できますか? (2022年4月7日 17時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
若菜 - 見ていて、悲しくなって、泣きそうになりました。素晴らしい作品ですね。 (2022年3月13日 15時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
琴音 - 切ないところもあったけれど、キュンキュンしました!ありがとうございました🙇 (2022年3月12日 17時) (レス) id: 65eb06c570 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうな(プロフ) - コメント失礼いたします。とても切なく、それでもあったかいお話で感動しました。同時に、このお話の夢主目線のお話も見てみたいなと思いました。もしお時間があり、いいなと思っていただけたらそんなお話も作っていただけたら幸いです。 (2020年11月3日 21時) (レス) id: 51a3f09150 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白霞 | 作成日時:2020年5月30日 19時