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「うぅ〜〜…さっぶ…」
誰かの声がする。ママとパパじゃない声だ。男の子の声。
サク、サク、サクと、雪を踏む音が近づいてくる。
僕の前で音が止まった。頭のすぐ上で声がかかる。
「…ボク、大丈夫?」
重たい頭を上げると、さっきの声の主がいた。学校の制服を着ている。高校生だろう。
彼は薄いシャツの上にブレザーを羽織っているだけで、他の防寒具は何もつけていなかった。誰がどう見ても春の装いで、見てるこっちが寒くなる。だが、本人はさして死ぬほど寒いというわけでもなかった。
「顔真っ白じゃん。ママとパパは?」
「…い、ない。ぼくを、おいて、どっかいっ、た。」
喉が凍ったように上手く動かない。なんとか声を振り絞ってそう言うと、さっきまで穏やかだった彼の表情が一気に曇った。目は驚きなのか、怒りなのか、見開かれており、下唇を血が出そうな勢いで噛んでいる。僕を叱り付けるパパに似た表情で、身体は反射的に丸まった。
「ご、め、なさ……?ごぇ、な……」
寒さで小さく震えていた身体をより一層震わせて許しを乞う。顔を胴体と足の間に埋めたせいで真っ暗な視界の中、彼は慌てて弁解の声を上げた。
「ごめんごめん。お兄ちゃん怖かったな。ほら、顔上げて。」
そっと優しく顔の左右に手が添えられる。そのままくっと顔を上に上げられると、彼の表情は元通り穏やかなものになっていた。
手が、あったかい。
彼の手はとても暖かかった。すこしかさついている手が、凍った顔を緩く温めていく。強ばっていた身体は自然と力が抜けていった。彼の赤い瞳が炎のように感じられた。綺麗な赤。
「…うち来る?」
「…?ぅん……。」
安心と眠気でうすぼんやりした意識の中頷くと、彼は僕を軽々抱っこして、白い建物の中へ入っていった。
ここが僕の家になった。
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ななっちー(プロフ) - このお話がとても大好きです。設定もファンタジーで過去があるのが最高です。更新楽しみに待ってます。 (2020年3月30日 23時) (レス) id: c8d03dec19 (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - はてなブログもこの小説も読ませていただきました。とっても面白いです。続きが気になります。更新大変だと思いますが頑張ってください! (2020年3月9日 21時) (レス) id: 85db3be13b (このIDを非表示/違反報告)
るん(プロフ) - この小説が大好きです。毎回の更新が楽しみでしょうがないです。大変だと思いますが、微力ながら応援させていただきます。 (2020年3月9日 1時) (レス) id: e59357a333 (このIDを非表示/違反報告)
みーさ - 教えてくださいありがとうございます! (2020年2月26日 6時) (レス) id: 890bcd117e (このIDを非表示/違反報告)
みーさ - 元のはてなブログを見たいのですが、探し方を教えて下さい (2020年2月24日 7時) (レス) id: 890bcd117e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ああああ | 作成日時:2020年2月17日 23時