無表情系少女は驚きを理解したい【刀剣乱舞】 (ページ35)

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第七十二話　有言を実行ページ35

　
　
　
洋風の屋敷なのに、どこかしらと和風がちらほら見えてたまにここはどこだ、と迷子によくなったがもう慣れた道で、迷いなく進む。

私は、出来ればここに近寄りたくなかった。
母の部屋は、他の部屋より少し…いや、少し所の話じゃない。
凄く、違和感のある部屋だ。
母の部屋は、時代を〝跨いでなかった〟。
この屋敷が建てられたのは確かに大昔のこと。
変わっていないこともあるだろう。
本来なら、年季の入った部屋の老化は早いはず。
なのに、どこも劣化などしていない。
誰かが手を入れたのなら話は別、だがそんなことも無い。
手を入れたのなら、痕跡がある。
それが無いのだ、まるで〝時が止まったかのような空間〟

古株の莉菜さんでも、気にしている素振りを見せていなかった。
〝いつもの風景にしかみえていない〟のだろう。

────劣化しないのは、おかしい。

「……相変わらず、長い廊下」

漸く母の部屋の扉が見えて、ひとつ息を吐く。
一度目を閉じて、深呼吸。
心臓が、うるさい。気を落ち着かせようとしても心臓の音で落ち着かない。
ここまで来て、情けない。

「────おちつけ」

おちつけ、明神A。
お前ならできる、有言を実行すれば良い。
だいじょうぶ、〝私〟はやれる。

深呼吸して数秒、瞼を開けて扉を三回叩いた。

「───母さん、Aです」

『───お入んなさいな』

不思議と、心音は静かに脈を打ち始めていた。