第六十二話 白か赤か ページ25
薬研はどうやら、仲間になりたそうだ。
…………なんてテロップがあったらドン引きしてた。
ありのままのことを噛み砕いて言えば、そうだな……
粟田口、いや織田の刀は皆ファイヤーが好きなのかな？(※語弊があります)
発端は鶴で、それに乗ったのが清光だったかな。
ハナさんのぎっくり腰が再発して孤児院全体が阿鼻叫喚。
阿鼻叫喚っていうのは、子供達だから安心して。
安心できない？ それは失礼。
で、薬研藤四郎筆頭にハナさんの看病につき
手伝いたいのは山々だったがひと睨みでしかもドスの効いた声で「邪魔だ」なんて言われたら大人しく待つしかないじゃないか。
あの薬研藤四郎、実は短刀じゃなくて脇差とかじゃないか？
その待っている間で起こったのだ。
酷い、というか…
どこぞのブラック事務所の喜劇みたいなコントが始まった。
鶴に織田信長について聞いていたら唐突に清光が
「主が……浮気してる……っ！」
と言い出して、あっ逆だ。
発端は清光だった。それに乗ったのが鶴だった。
いやどっちにしたってタチが悪いんだけど。
それで鶴は
「弥勒は俺のものだ、清光のじゃないだろう？」
って言い出して、……また違った喜劇みたいなコントじゃない。
昼ドラの泥沼シーンだった。
……この数分で私は壊れたと思う。
今だってぽんこつな説明しかできない。
そして今現在進行形で……
「主は俺の主だっての！」
「最初に会ったのは俺だぜ？」
「最初に会ったとか関係ないし、ていうか鶴丸主に近すぎ離れなよ」
「清光こそ主を離れたらどうだ？」
「きみたちどうしたのほんと……」
ねえ、私昼ドラの男役になりたくないんだけど。
だいたい、なんでこうなったの。
五虎退に助けを求めようとしたら何やら孤児院の子供になにかを……
「ねぇ猫のお兄ちゃん、あのお姉ちゃんのコイビトってどっちなの？」
「あたしは白い人の方だと思う！」
「えーっ！ わたしは赤いお兄ちゃんだと思う！ だってカッコイイんだもん！」
「え、えっと……」
ここの子供はみんなあのドラマでも見るのか？
ハナさんいったい何してるの、どういう教育してるの？
薬研藤四郎……、早く帰ってきて欲しいのだけど。
「「主！」」
「……なに」
「「主はどっちがいい！？」」
突っ込みきれない。
どっちがいい、と言われても…
交互に二人の顔を見て、どうするべきか…
と思いながら、ふと思い出したことがある。
「────私は…」
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