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キラキラと輝くピアスに、スカートまで隠れる長さのカーディガン、ツヤツヤと光る金髪。
自分達とは違う“上”の人間の存在に、クラスメイトの視線がすべて2人に集まっているのが分かる。
月島とギャルが何事もなく楽しそうに話し始めると、静かに様子を窺っていた島はまたざわざわと騒がしさを取り戻していく。
「あの2人ってなんで仲いいんだろうね」
俺とは目線を合わせずに、さっきよりは聞き取りやすい声で俺に話しかけてくるクラスメイト。重たい前髪が汗ばんだおでこにぴったりとくっついている。
言いたいことは確かに分かる。
教師から贔屓される優等生と、疎まれやすい落ちこぼれ。同じような強い磁力をもっている2人は、お互いに自分の強い磁力に引かれてきた人間と集まって騒いでいるのが普通なのに、かっちりとくっついてしまった真反対の磁力。
「あの金髪の人、夜のお店で働いてるらしいよ。たまたまおじさんと肩並べて歩いてたところ、見た人がいるんだって」
特に聞いてもいないのにぺらぺらと早口で話すクラスメイトの口ぶりには、人間の濁った感情がうっすらと透けて見える。
「あ、それ俺も聞いたことあるべや。結構際どい服着てたっつって」
こことかここがはだけてるっつうの、なんかエ○いやつ、と身振り手振りをつけながら、横の席の川田が鼻息を荒くしながら会話に入ってきた。
「まあ確かにあるよな、あれは」
わきわきと手を胸の上で動かす川田の動きは飢えた獣みたいで、「なんか汚いな、お前」と呆れたように俺が言うと、「お前だってそう思うだろ！男なんだし」と強く同調を得ようとしてくる。
「月島さんもアッチ側なんかねえ、もしかしたら」
汚い、じっとりとした目で月島を眺めながら耳打ちするように呟く川田。
「ただの噂だろ、…月島はそんなんじゃないよ」
もう、ツレないわねえ菅原くん！と体をくねらせながら茶化してくる隣を無視して、左耳につけていたイヤホンを月島の机に置く。
月島とは1年生のときに同じクラスだった。
今と同じクリーム色の髪の毛はふわふわとしていて、睫毛は下にゆるく伸びたままで、誰でも話しかけやすいやわらかい雰囲気をまとっていた。
3年生になって再び同じクラスになったとき、俺はきらきらと光る彼女を見て同一人物なのかと目を疑った。
1年間の間になにがあったのか、俺はそれをまだ聞けないままでいた。
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作者名：たなかさん | 作成日時：2024年2月25日 19時
