32話《合宿雪合戦 弐》【日向】 ページ32
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なんとか振り切り、腰を下ろす。呼吸を落ち着かせようとするが、冬の乾燥した空気では思うように息を整えることができない。他の面々もそうだったが短刀の彼も結構速かった。ピョンコピョンコと跳ねてまるで羽が生えているみたいで、それでも機動は中々の鬼だった。
用心のため屋根の上を含めて辺りを見回してみたが誰もいなさそうだ。奇襲に備えるため幾つか雪玉をこさえる。
「おおー、すげえな。指先が真っ赤だ。オマケにちょっと感覚がない」
「いや、雪合戦やるって提案するんだったら手袋くらい用意しときなよ。見てるだけで寒い」
「いやいや、まさか雪が降るって思わなんだ。本丸じゃあ雪なんて降らんし忘れてた。てっかそう言う安定も手袋用意してないじゃないか」
安定は内番衣装じゃ寒いからといつもの戦装束を着ている。走るたびに揺れているマフラーが暖かそうだが手には手甲だけ。防寒としては心もとないし赤と白と黒じゃグラデーションにもならない。
「完全に忘れてたんだよ。主が突然の思い付きするの。おかげで寒いし手が凍りそうだしやめてよ。迷惑な思い付きばかりする何処かの学園長先生じゃないんだからさ」
「さりげなくN本放送協会の番組に詳しくなったね安定」
「誰かさんのおかげで、ね。それより雪玉作りに集中して。なあなあじゃ許さないからな」
雪よりも隣にいる近侍が冷たい。
――でも、例え渋々でもこんな遊びに付き合ってくれてるってことはまだ望みはあるのか。
「なあ、安定――」
「黙って」
静止するよう手を出される。安定が睨んでいるのは入り口の門から入ってすぐの庭園。スタート地点と本殿を挟んでそう遠くない場所だ。建物の死角もあり、木が生えていたり石(岩?)があったりして身を隠すのには丁度いいと思われる。
「……敵か?」
「かもしれない」
向こうも出てくる気配がない。緊張状態が続く。
「行こう」
「うん」
此方の勝負に一区切りつけ、目の前の敵に集中する。気付いたら二人とももう既に飛び込んでいた。自分の初陣は合宿場で、武器は雪を固めて作った玉。脆く刀装の代わりにもなりゃしないし、勿論首なんぞ落とせない。
「オラオラオラァッ‼」
「首落ちて死ねっ‼」
その時、視界の端で白く大きなものが動くのが見えた。しかも、二つ。驚かすことが好きな老人の得意気な顔を最後に自分達は落下運動を始めた。
前しか見えないのは時に不便だ。
＊
そうして沢山オラオラして、中に入った。惨敗だった。それでも楽しかった。満足。
33話《寒い遊びのあとは》【刀眞】→←31話《合宿雪合戦 壱》【日向】
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風鈴(プロフ) - 霧月さん» はい、構いません！空いてる日は明日ですが大丈夫ですか？ (2017年1月2日 0時) (
レス) id: 4377e4976a (このIDを非表示/違反報告)
霧月 - ごめんなさい。諸事情により更新出来ませんでした。ので空いてる日に更新させて頂いても良いですか？ (2017年1月2日 0時) (レス) id: 8bfb8600b1 (このIDを非表示/違反報告)
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