大の大人がトリップしてしまった。【男主】 (ページ10)

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双獣ページ10

白虎…もとい敦君との攻防戦はしばらく続いた。

『フーッ…フーッ…戦いにくいな…』

太「…A君、まだ終わらないのかい？」

太宰さんがコンテナの上で愛読書を読みながらそう訊いてくる。

他人事みたいに言いやがって…

『五月蝿いですね、こっちだって慣れない体で戦ってるんですよ…もっと労っても良いんじゃないですか…！っと』

太「ふふ、そうだね……そろそろ選手交代といこうか」

太宰さんが意味深にそう言うと、今まで俺に向かっていた白虎の視線は逸らされ、太宰さんの方へと向かっていく。

『…まさかこいつ、狙いを太宰さんの方に…』

太「…だろうと思ったよ…獣というものは弱い者を追い詰めるものだからね」

虎はそのまま狙いを太宰さんに付けたまま、木箱やコンテナの山へと向かっていく。

バキバキッ

虎の前足が太宰さんの頭を狙い、木箱をどんどんと壊す。

太「…こりゃ凄い力だ。人の首くらい簡単に圧し折れる………おっと」

太宰さんが攻撃をひらりと躱していると、ついに壁まで追い詰められてしまっていた。

『太宰さんッ！？』

太「A君はそこから下手に動かないでくれ給え、折角の獲物を逃がしてしまうからね」

言い終わった瞬間、白虎は太宰さんへと飛びかかった。

太「…獣に喰われる最期というのも中々悪くはないが…」

太宰さんは飛びかかった虎の頭に触れる。

太「君では私をｺﾛせない」

すると虎の影は消え、敦君の姿へ戻った。

『・・・！？』

太「私の能力は────あらゆる他の能力を触れただけで無効化する」

出てきた敦君が力なく倒れかけ、それを太宰さんが受け止める…と思いきや、虎化した俺の方へ寄越した。

太「男と抱き合う趣味はない…だからA君に預けるよ」

この毛皮を見てそう言ったんだろうけど、俺はなんも許可してないぞ…

『はぁ…仕方ないですね』

自分でもどうやったのか分からないまま虎化を解き、腕で敦君を支えるようにして立つ。

『…にしてもあれは何だったんだろう…急に自分も虎になるし…』

太「…じきに判るように…」

国「おい、太宰！」

声の聞こえた方を見ると、倉庫のシャッターの下に国木田さんが居た。