12.『優しい貴方』 ページ12
シルビア「さっきのは…本当にあの子なのかって考えちゃうわね」
あのナイフを振り上げた瞬間見えた横顔。
瞳には光は一切なく、その盗賊の息の根を止めることしか考えていないような顔。
思い出すたび少しの恐怖とさっきまで竪琴を弾いていたあの子が違う人のようにも感じた。
まるで夢でも見ていたかのような感覚だった。
先ほどの恐ろしい顔は消え、ただの優しい寝顔がそこにあった。
シルビア「優しい貴方がどうして、あんな風に取り乱してしまうの?」
そう言い、優しく頭を撫で頰に触れた。
Aちゃんは身じろぎ、アタシの手に擦り寄り、目を開けた。
起こしてしまったと思い、慌てて手を退けようとすると掴まれた。
細く優しい手。
「シルビア…?」
シルビア「ご、ごめんなさい。ちょっと髪が乱れてたから」
ついとっさに嘘を言ってしまった。
でも、男に心配されるのは筋違いかもしれないと思い、口を噤んだ。
Aは気にせず、掴んだアタシの手をみつめる。
そして小さく笑みをこぼす。
「暖かくて、安心する…」
アタシの胸の奥底で何かが流れ始めた気がした。
暖かくてくすぐったい。むずむずして恥ずかしい。
Aちゃんは、もう一つの手でアタシの手に触れて両手で握る。
「このまま…手を、握っててもいいかな?」
シルビア「え、ええ。構わないわよ??」
「ありがとう」
そういうと握ったまま、眠ってしまった。アタシは片手をこの子に掴まれてるので寝ざるを得なくなった。
改めて見たAちゃんの寝顔は嬉しそうに笑ってるような気がした。
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作者名:トラ若 | 作成日時:2020年4月10日 0時