Ｔｏｐａｚ__9th__ (ページ48)

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移行までの小話② ページ48

裕翔side

中「はい、これ」

こんなときのために……と、保健室にはやまの薬がお父さんから預けられていて。

一人で帰ろうとしていたところを保健室へ連れていくと、先生から薬を受け取り飲ませた。

すると、一旦は落ち着きを取り戻すやま。

でも一時的なものに過ぎない。

ポーチがないと心がソワソワして、また不安そうにする。

中「待っててね」

涼「ゆうと……ごめんね…」

中「気にしないで。やまの大切なものは俺の大切なものでもあるからね」

涼「？…」

登校時は“薬は持った？”と親のように確認している俺。

“持ってるよ”と鞄から出して見せてくれるのが可愛くて朝から癒されるんだ。

…………今朝もちゃんとあったのにおかしいな。

通学時は触っていなかったし、落としたとしたら校内…………

念のため先生にもう一度確認したけれど無いと言われてしまった。

中「先生、やまのお兄さんに確認していただきたいことが………」

「大貴にか？」

中「はい、ポーチの行方を知らないかどうかを」

「ああ、探しているってやつか。確認しておくよ」

今日は大ちゃんも一緒に登校したんだ。

隣とはいえ抜け出していくわけにはいかないから、先生から高校に連絡してもらう。

何か手がかりになるといいけど………

「……そうか、分かった。」

中「どうですか？」

「大貴が持ってるってよ」

中「え？！」

何故大ちゃんが………？

大「悪い、悪戯のつもりで鞄から抜いて返すの忘れてた」

俺とやまが一日ずっと探し求めていたポーチを雑に片手で持ち、届けに来た大ちゃん。

謝るのは口先だけで悪びれる様子もない様に見えるのは気のせいかな？

中「悪戯って………子供なの？それでやまが大変なことになってたのに」

大「まじ！？ど、どうしよう……涼介のやつ、口聞いてくれなくなるかな」

中「自業自得でしょ」

山田家の兄弟喧嘩って、大体は大ちゃんの余計なことが原因だよね。学んでよ………

落としちゃった、どうしよう……と悲しむやまの姿を見るこっちの身にもなってほしい。

可哀想で胸が痛んだのだからね？

大「頼む、謝っといて！」

中「自分で謝りなよ」

大「裕翔が謝った方が効くじゃん」

中「全然反省してない」

真実を伝えるべきか迷ったけれど、やまの元へポーチを持っていくと…

涼「ゆうと、ありがとうっ」

目を輝かせてお礼を言われたから、喧嘩されるのも嫌だし……黙っておいてあげた。

＿＿＿＿＿＿＿fin．