Ｔｏｐａｚ__9th__ (ページ46)

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移行までの小話ページ46

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慧「何か悲しかったのかな……？」

慧によれば、番組内では大家族が揃ってご飯を食べていたらしく…………俺からすれば悲しくなるような箇所は見当たらない。

感受性の豊かな涼介は、その楽しそうな光景から別のものを感じ取ってしまったのか。

涼「………ごめ、んなさぃ……」

大「っ、慧っ…」

謝り始めたら不味いな………

こうなれば………と、俺は扉を無理矢理開けようとした。
けれど、慧がそれを止める。

慧「謝らなくていいんだよ。悲しいって感情は胸に痛みを感じるでしょう？それはとっても大切なことなの」

涼「………」

慧「でもね、悲しいなって思っても言えなくて我慢して、一人でずっと痛くなるのは違うんだよ。

家族に言えないなら友達でいい。
友達にも言えないなら知らない人でもいい。

涼ちゃんの痛みの一部を持たせてくれないかな？」

涼「っ………ちがう、の……ごめんなさい………」

大「違う？」

涼「………」

扉の向こうに動いた気配があって。
ドアノブを回すと扉は開いた。

大「涼介」

慧「涼ちゃん」

涼「………悲しくなったのは、本当だけど………パニックじゃない…………」

慧「そうだったの………よかった」

なんだ………俺と慧の早とちりだったのか。
それはそれでよかった。

慧「急にいなくなるから心配しちゃったよ」

大「何が悲しかったんだ？」

慧「大ちゃん……」

あ、今聞かない方がよかったか？

涼「ぅん…………男の子がお母さんに怒られてるのみてたら、羨ましくなっちゃった…………僕はお母さんに怒られたことなかったから……」

俺たちのお母さんは早くに亡くなってしまって。

俺ですら怒られた記憶はない。

怒られてみたかったか…………思ったことなかったな。

俺の中のお母さんはいつも笑っていて、穏やかな優しい人だったから。

慧「そうだね、大ちゃんの言う通りの人だったよ」

大「えっ、……」

声に出てたのか、俺……

慧「お母さんはね、叱ったり怒ったりするよりも褒めてあげたいって言ってたの。それは慧くんも同じだから、怒られたことがなくて当然かな。

もちろん、悪いことをしたら叱るけど………みんな良い子達だったからね」

涼「そうなんだ………慧くん、もっと教えて？お母さんのこと」

慧「いいよ、いくらでも話してあげる。お母さん、皆には優しかったけど、慧くんには怖かったことも」

涼「え…？」

慧「ふふ、」

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿fin．