◇誰も言えない＿1 ページ20
大貴side
学校が終わり、買い物袋をぶら下げた帰り道。
前を歩く中学生の鞄が異様にでかく見える……って、あの後ろ姿は涼介か。
鞄はまるで、背負わせてやってんだよ、とでも言いそうな存在感。
大「涼介」
涼「っ………びっくりした、大ちゃんか…」
“か”ってなんだよ…………今日は裕翔はいないんだな。
優秀な委員長は先生にも頼りにされてるから忙しい……そうなると、涼介は他に一緒に帰る友達がいなくて。
人との距離感が分からないとか言ってたな………今まで関わってきたのは殆ど自分よりも年齢が上の大人だったから、同級生になると尚更。
俺の弟だから素質は充分あるはず………ま、そのうちかな。
大「荷物持って」
涼「やだ」
即答かよっ、別に本気じゃなかったけど……
“持って”
“やだ”
飽きずに繰り返している内に家に着くって、俺たち仲良いな。
大「ただいま、………はぁ〜？」
今朝、家を出る前よりも荒れているリビング。
仕事が溜まっているらしい慧は使い物にならなくて……辛うじて干された洗濯物は庭で風に揺れている。
大「慧、洗濯物乾いてんじゃねぇの？」
慧「あー、うん。お願い」
大「俺片付けあんのに……侑李の迎えは？」
慧「んー、お願い」
………俺一人で全部は無理だぞ？
やること多すぎて何処から手をつければいいんだよ………
涼「………手伝うよ。洗濯物入れて、畳めばいい？」
大「頼む」
涼介が一つ仕事を請け負ってくれたので、俺は買ってきたものを冷蔵庫に適当に詰め込んだ。
…………飯作る前に保育園だな。
着替えている時間も勿体ないからそのまま。
あとは帰ってきてからやるとして…………
大「悪いけど、それ終わったら風呂やっといて」
涼「ん………行ってらっしゃい」
こっちに背中を向けながら、一枚一枚丁寧に洋服を畳む涼介に安心して。
俺は鍵を持って外へ出ると、自転車を走らせた。
涼「……っ、ん………はぁ………」
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