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再会 ページ18

『本日より教育実習をさせていただく、AAと申します。ご迷惑をお掛けすると思いますが、どうぞよろしくお願いします』

これだけの台詞を言うだけで、体が震えてたまらなかった。頭を上げて、炎を灯した瞳を見た瞬間、時が止まったように感じた。

__ああ、生きている。

笑顔を見せるつもりだったのに涙が出そうになって、ぐっと堪えた。

「A、なのか」

ガタリと椅子から立ち上がる音。
そして彼にしては珍しい、消え入りそうな声。

いいや…前にも一度聞いたっけ。
あの、最期の日に。

「二人で話してこい」
「そうだなァ…今の煉獄先生じゃ仕事になんねぇだろォ」
「こっちは任せろ」

宇髄さんに背中を押される杏寿郎さん。少しふらつきながら私の方へ近づき、私の手を握った。杏寿郎さんの手は震えている。
そのまま手を引かれて着いたのは社会科準備室。
扉を閉めた瞬間、抱き寄せられた。

「A、Aッ!やっと会えた…っ」
『杏寿郎、さん』

我慢していた涙が零れ落ちていく。だめだ、せっかくメイクもしたのにな。でも仕方ない。耐えられるはずもなかった。

「ずっと会いたかった!ずっと、ずっと君を探して…!」
『わた、しもっ、会いたかった、ですっ』

首筋に生暖かいものが伝う。杏寿郎さんが泣いているのだと気付いた。

「もう、離れないでくれ…君がいないと俺は、苦しくてたまらないんだ」
『また、一緒にいても、いいんですか』
「当たり前だ!そう約束しただろう?それに言ったはずだ、俺の隣は君でなければ嫌だと!」

杏寿郎さんは抱きしめる力を弱め、私と目を合わせた。その顔は涙で濡れている。

「カフェに、“でぇと”に行こう」
『っ、はい』
「歌舞伎も見に行かなくてはな。俺のおすすめで良いだろうか」
『はい、一緒に見に行きましょう…っ!』

かつての約束が蘇る。果たす時が来るなんて、思ってもみなかった。

「好きだ、A。愛している」
『私も、大好きです、杏寿郎さん…っ』

永遠に感じられるような、幸せな時間だった。

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ナキサ(プロフ) - 飛鳥さん» こちらこそ読んでくださりありがとうございました! (2021年11月22日 19時) (レス) id: 9d3d6315a8 (このIDを非表示/違反報告)
飛鳥 - ものすごい大作に出会ってしまいました……ありがとうございますありがとうございます… (2021年11月22日 9時) (レス) id: d3040dc27e (このIDを非表示/違反報告)
ナキサ(プロフ) - あまねさん» 読んでくださりありがとうございます!楽しんで頂けたようでとても嬉しいです。 (2021年11月15日 23時) (レス) id: 9d3d6315a8 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - 最初から最後まで一気読みしちゃった笑、、、待ってなんでこの神作に早く出会わなかったの?私バカなの?((((喧しいわ (2021年11月14日 9時) (レス) @page23 id: 1a6dd63888 (このIDを非表示/違反報告)
ナキサ(プロフ) - meruriさん» コメントありがとうございます!感動していただけれ嬉しいです (2021年10月28日 22時) (レス) id: 9d3d6315a8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ナキサ | 作成日時:2021年3月5日 14時

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