【煉獄杏寿郎】全力で救いたい！【トリップ】現代・番外編

十一 ページ12

「すっかり遅くなってしまったな！」

学校は今はテスト週間。
こうなると生徒が大勢質問に来る。

大変だが、勉強熱心なのは良いことだ。
遅くまで残って勉強している生徒の助けになりたいと思うのは、教師として何もおかしくはないだろう。

あまり夜道を歩くのは褒められたことではないが、こうなれば仕方なし。
鬼殺隊での経験のおかげで、ある程度の危険なら対処出来ると自負している。今も鍛えてはいるから、大丈夫だろう。慢心は良くないが。

そうして歩いているうちに、どこからか声が聞こえてくる。そして揉めている二つの人影が見えた。

“離してください”という女性の声で、状況を把握する。すぐに助けに入ろうと向かうが、足を止めた。
伊黒がこういう時は証拠の為に動画を撮るといいと言っていたのを思い出した。
スマホを構えながら、いつでも助けに入れるようにする。

女性の方は男の急所に足蹴を入れて逃げる。うむ、見事。

助けられずすまない。己が不甲斐ない。
しかし、こういった輩を警察に突き出し、同じ被害が無いようにすることもまた必要。
どう対応するのが正解なのか、難しいものだ。

「待て…！！」

蹲りながら、それを男が追いかけようとしていた。スマホを仕舞って、止めに入る。

「か弱い女性を狙い、襲うこと。認められたものではないな！」
「な、なんだお前っ、邪魔すんな！！」
「する！君を警察に連れていく！」

暴れる男を抑え、一番近くの交番に連れていく。
…よもや、俺が人攫いのようになっていないか？
まあ俺は何も悪いことはしていない。堂々としていればいいな！

「すまない！こちらの男性が女性を襲っていたので連れてきたのだが！」
「…え？えぇと、はい」

交番にいた警察官は少し戸惑った様子を見せたが、理解はしてくれたようである。
いくつか質問に答え、先程の動画を証拠として見せれば、後は警察で対応するとのこと。
うむ、俺ができるのはここまでだな！




…ところで、襲われていた女性が、Aに似ているんだが気の所為だろうか。暗くて分かりにくいが、姿も声も、彼女にしか見えなかった。
もう一度動画を再生して見ても、やはり似ている。

Aだとしたら、案外近くにいるのかもしれない。この街を探せば、いずれ会えるだろうか。

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