弐 ページ4
__しかし、この後どうする?
これが本当に鬼滅の鬼だとすれば、私は倒す術がない。
そうこう考えているうちに鬼は立ち上がる。
怒っている様子だった。
日輪刀は勿論持って無い。
夜明けの気配は全くない。
寧ろさっき日が落ちたんだ、あと何時間あるのか。
「決めた、お前絶対に喰ってやる」
ギラギラと光る目。口から見える牙。
私を狙っているのは明らかだった。
__あぁ、怖い。
体が震えるのが分かった。
けれど、あまりにも非現実的なこの状況は、何故か現実なのだ。
ならばどうする。
助けが来るまで、耐えるしかない。
夜明けまで、耐えるしかない。
夜の風が私を奮い立たせた。
「お?なんだ、やんのか?武器も何もねェその状態でェ?」
嘲笑う鬼を睨みつける。
瞬きすると鬼は目前まで迫っていた。
『っ!?』
持っていた鞄を鬼との間に挟み込み咄嗟に防ぐ。
鬼の牙が鞄に突き刺さるのを見て、背筋に冷たいものが走った。
あれが私自身に刺さっていたら。
一瞬の気の緩みが死に繋がることを改めて感じる。
鞄に齧り付く鬼はそのまま体重を私に乗せ、私は耐えられずに地面へと押し倒される。
鬼の手が私の腕を掴む。鋭い爪が突き刺さった。
『いっ…!!』
痛い。痛い。
腕から血が出てる気がする。絶対出てるわ。
鞄から牙を離した鬼は、今度は頭を私の顔へと近づける。
やめろ、お前の顔面でその距離はキツイ!!
私と鬼の間にある鞄をがむしゃらに蹴り上げ、鬼を突き放す。
なんとか鬼が襲いかかる前の立ち位置に戻る。
言い換えれば振り出しに戻っただけ。
いや、これを繰り返せば時間稼ぎができるはずだ。
「強情な女は嫌いじゃないぜェ」
『その台詞はイケメンかモブおじさんだけが許されるやつだからな言っとくけど!!!!』
「あ?なんだその“いけめん”やら“もぶおじさん”とやらは」
カタカナ言葉が通じないあたりますます鬼滅っぽいぞ。本当に大正時代かもしれない。
なにしろこいつは我らがモブおじさんを知らない。
あぁ、くっそ腕が痛い。
「まァいい。夜明けまでェあと…そうだなァ、ざっと十時間はあるかなァ…」
鬼はそう言うと卑しい笑みを浮かべた。
キッモ!!!(素直)
くっそ、耐えてやる!!
もはやムキになって、地面を踏みしめる。
目の前の鬼だけを見ろ。
挙動を一つも見逃さない。動きを予測しろ。
私は集中していた。
カラスの鳴き声すら気にならないほどに。
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蒼の戦姫ナキサ(プロフ) - 5262さん» コメントありがとうございます!励みになります! (2020年12月17日 11時) (レス) id: 9d3d6315a8 (このIDを非表示/違反報告)
5262(プロフ) - 初めましてコメント失礼致します。続きが楽しみです!大変だと思いますが更新頑張ってください、応援してます (2020年12月15日 17時) (レス) id: e1b40e07f2 (このIDを非表示/違反報告)
蒼の戦姫ナキサ(プロフ) - コメントありがとうございます!夜はいいですよね! (2020年12月7日 23時) (レス) id: 9d3d6315a8 (このIDを非表示/違反報告)
レイレイン - 夜が好きッ!?私と同じだ… (2020年12月7日 17時) (レス) id: 5a04a92c31 (このIDを非表示/違反報告)
蒼の戦姫ナキサ(プロフ) - yersk0402さん» ありがとうございます!!煉獄さんに会いたいですよね!!更新頑張ります! (2020年12月6日 20時) (レス) id: 9d3d6315a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナキサ | 作成日時:2020年11月28日 20時