浮気性【三途春千夜】

17 ページ17

あれから数日。


春ちゃんとはなんの音沙汰もなく、灰谷家で平和な毎日を送っていた。

いや、反社のやつらと一緒に住んでる時点で全然平和なんかじゃないんだけどね。




そんなある日のことだった。


たまたま仕事は休みで、でも2人はいつも通り仕事だから1人でお留守番。

蘭ちゃんなんか朝“俺も今日休んでAと家でイチャつく”なんてドヤ顔で言ってたから無理矢理追い出してやった。



一応お世話になってる身なわけだし、2人分のお弁当を用意して持たせておいた。

渡したら秒で食べようとする2人を止めるのに必死だったけど。





暇だしなんかDVDでも見ようかなー、なんて周辺を漁ってみればそれらしきものを見つける。





『げっ』


なんだろう、と見てみればそれは世に言うA V。

ああそうか、2人もこう言うの見るんだ…なんて思うと弱音を握った気分になってちょっと嬉しかった。




流石にA Vなんか見たくないわ…と元あった場所に戻せば部屋中に響くインターホンの音。


竜胆か蘭ちゃんかな？

なんて思って玄関に向かいドアを開ければそこにいたのは1番会いたくなかった人。




「此処にいたのかよ…」

『…は、るちゃん、』

「帰るぞ」

『ちょ、痛いっ、』





私の顔を見るなり腕を掴みグイグイと引っ張る春ちゃん。

掴む力はものすごく強くて腕が痛い。





『やだっ、離してよっ、！』

「…あﾞ？」




痛さに耐えながら思いっきり春ちゃんの手を振り落とせば、ギロリと私を睨む。

思わず肩をビクッと揺らせば春ちゃんは再び口を開く。





「帰って来い」

『…なんで、』

「お前ん家は此処じゃねぇだろうが」

『出てくって言ったじゃん！』

「そんなん俺が許すわけねーし」




ああ言えばこう言う状態で、会話なんか成り立たない。

私の言い分は全部無視。


…こう言うところも、浮気がなければ全部大好きだったのに。




『他の女の人抱いた手で、触らないでよっ、』

「テメェいい加減にしねぇとぶっ殺…」

「いい加減にするのはテメェだ三途」

「あﾞ？」

『り、んど…』




泣きそうになりながら春ちゃんと言い合っていれば、背後から聞こえる声。

聞き覚えのあるその声に思わず振り向けば、走ってきたのか息が上がっている竜胆の姿があった。


竜胆はそのまま私たちに近づいてきたかと思えば、私を春ちゃんから引き剥がし自分の腕の中に入れる。





「おい三途、お前にAを抱く権利ねぇよ」

「…死にてぇのか？」

「こっちの台詞だ」




もしかしたらこれは、だいぶやばい状況なのかもしれない。

18★→←16

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す