東京卍會の姉貴

圭介.千冬▽ ページ8

『しぬわ！！』



突然訳も分からず口に串をねじ込まれた。

流石に喉逝ったと思った。

唐揚げは美味しかったですけれども。



松｢あっすんません｣

場｢何してんだよ千冬ぅ｣

松｢いやあの…Aさん、俺らのために買ったやつじゃねえのに悪ぃなって思っちゃって｣



松野がそんなことを言って、私はちょっとビックリした。

だってそんなこと一言も言ってない。



松｢2本あったってことは、自分の分と友達か…タケミっちかの分だったんじゃないんすか｣

『や、そうだけどさ』

松｢1個食っちまったけど、残りは食ってくださいよ｣



そう言って申し訳なさそうに笑う彼は東卍には居ないタイプの子だった。

普通そんなこと気にしないでしょ。



『人のことよく見てんだね、すごいね』

場｢…A…俺半分くらい食っちまった…悪ぃ…｣

『あ、いや！気にしないで食べてよ！松野が気にしすぎなだけだから！』



ありもしない耳がぺしょんと垂れ下がるのが見えた気がした。

場地は本当に弟に向いてるね。



『てゆーかさ、松野は敬語外していいよ』

松｢ん、じゃあそうする。俺のこと千冬って呼んで｣

『おっけー千冬ね。千冬塩対応に敬語合わさってすっごい他人感あって寂しかったからちょーどいいや』



そんな他愛ないことを話しながら一緒に集会に向かっていた。

すると黙っていた場地が俺も、と小さい声で言った。



『場地、何か言った？』

場｢…俺も、圭介って呼べよ｣

『何で命令形なんだよ。声ちっさ』

場｢るっせ！｣



いつもうるさい彼からは想像が出来ない声量。

照れてんのか、それともさっきのしょげを引きずってんのか。

どちらにせよ可愛いな。



『千冬に圭介ね。私のことは変わらず名前で呼んで。お前って呼んだら無視すっからな』

場｢そーいやAの姉ちゃん呼び、東卍の中で結構定着してんぜ｣

『やだ恥ずい』

松｢最近はドラケンくんまで姉ちゃん呼びしてる時あるな。あれはちょっと笑った｣

『ドラケンが？！何それ可愛い』





数年前の私が見たら卒倒するかもしれないな、この絵面。

右に不良、左に不良。



私が変わったのは間違いなくこいつらのせい。

こいつらが居なければ、これからも不良に自ら関わりに行くことなんてなかった。

今までの私の普通を壊したのはこいつら。

だというのに、私は私を変えたこいつらを憎く思っていない。


この日私は、私が嫌った不良と東卍がどう違うのか、今後も見ていくことを決めた。

隆→←場地.松野

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