東京卍會の姉貴

イザナ(リク)▽ ページ28

『マイキーにもう1人お兄ちゃんがいたんだ』

黒｢うん。イザナって呼んでよ｣



真一郎くんについてはよく話を聞いていた。

バイク屋の店長らしくて、何でもどこかのチームの総長だったんだとか。



黒｢あいつやっぱ言ってなかったんだ。ムカつくぅ｣

『…でも失礼だけど、あんまり似てない、よね』



そう言うとイザナから笑顔が消えた。

触れちゃいけないところだったかもしれない。



黒｢兄貴…だけど、血は繋がってないんだ。戸籍の関係でそういうことになってるだけ｣

『…なんかごめんね』

黒｢いーよ別に｣



お前らもそういう関係でしょ、とイザナは言う。

お前らというのは私やマイキーたちのことだろう。



『うん、まあ戸籍はいじってないけどね。口約束で姉貴になったって感じ』

黒｢ふぅん。なら俺の姉ちゃんでもあるよな？Aお姉ちゃん？｣

『うんそうね』



今日から俺の姉ちゃんね、と笑顔で言った。

この佐野家ってやつは人を振り回すのがどうも得意らしい。

まあ今更だから断る理由もないけど。



黒｢…嫌？｣

『なわけねーだろ殴るよ』

鶴｢何の逆ギレだよ｣



きゅるん、と効果音がつきそうな上目遣い。

自分のことよく分かってやがるなこいつ。



『それにしてもマイキーに血が繋がってない兄貴なんて居たんだ』

黒｢あいつ俺のこと話さないもんなあ｣

『なんか良いね、そういうの』

黒｢そうかぁ？｣



イザナはヘラっとして言う。



『うん。遺伝子や血ってどうあがいても切れないじゃん？だからこそ成り立つのが家族ってやつでしょ』

黒｢…うん｣

鶴｢…｣

『そんなの関係なく繋がれるって奇跡だと思わない？友達も恋人も自然と切れる時があるけど家族って切りたいと思わなきゃ切れないじゃん』



自分の意思ひとつで切れるのが血の繋がりが無い関係。

しかし家族は自然消滅が存在しない関係。



『自然消滅がないってだけで十分な関係じゃない？』

黒｢…A姉ちゃん男と自然消滅したことある？｣

『うるせえみなまで言うな』

鶴｢ぶはっ｣



笑ってんじゃねえよカク。


イザナは私の話を一通り聞いてからすっと空を見上げた。

私もつられて見上げる。

綺麗な青空だった。



黒｢…奇跡、ね…生ぬるいこと言うよなぁ｣

『生ぬるくて結構。あんたたち不良と違って平和ボケしてんのよこっちは』

黒｢…ははっ｣



イザナが自然な笑顔で笑う。


作り笑い以外もできるみたいで安心したよ。

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