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森を抜ける。
村が見える。
もう少しで、師匠の所へ辿り着く。
「お姉ちゃん!!!」
遠くから、誰かが走ってくる。
あれは…小太郎くん?
「お姉ちゃん!!大変だ!おじさんが…!!」
目に涙を溜めた小太郎くんは、必死にそう叫びながら自分の後ろを指さした。
「おじさんが、化け物に…」
「ッ!!」
私は何も言わずに、再び走り出した。
嫌だ、嫌だ嫌だ。
師匠、お願い。
私の前から居なくならないで。
「師匠!!」
登ってきた朝日が目に染みる。
師匠は、血を流しながらボロボロになった家の壁に寄りかかっていた。
「おぉ…Aか」
ニヤリと笑った師匠が私の頬に手を伸ばす。
その手に頬を擦り寄せれば、ポロポロと大粒の涙が溢れ出た。
「こんなに大怪我して…しばらく私が夕食当番じゃないですか」
「あぁ、そうだな」
「とにかく、早く蝶屋敷に運んで貰いま__」
そう言って立ち上がろうとすると、師匠に突然腕を掴まれた。
彼の表情に、息を呑む。
「ここに来たのは上弦の鬼だった…村人を守るのが精一杯で、首を斬れずに逃がしちまった…そんで、俺はこの有様だ。もう、死ぬだろうな俺は…」
「何を言ってるんですか…」
「いいか、よく聞け。お前は俺の自慢の弟子だ。強くて、優しすぎて、馬鹿で、すぐ泣いて、すぐ怒る、俺の大事な娘だ」
師匠は、力なくその場にへたりこんだ私を、腕の中に抱きすくめた。
私はもはや、何も言うことが出来なかった。
ただただ、喉の奥がギュッと縮こまって、目頭が熱くなって、師匠を抱きしめ返すことしかできなくなった。
「お前なら、やり遂げられる。なんてったって、俺が育てた剣士だからな」
「師匠…!」
「"胸張って生きろよ"」
私を包む身体から、スっと力が抜けていく。
朝日が村中を明るく照らし始めた頃、師匠は優しい笑顔を称えたまま死んでいった。
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みーた(プロフ) - 麗羽さん» 泣かないでぇ(´;ω;`) (2019年10月12日 21時) (レス) id: 8487e33076 (このIDを非表示/違反報告)
麗羽(プロフ) - 普通に泣きました……( ;∀;) (2019年10月12日 13時) (レス) id: 835b4d5769 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ(プロフ) - みーたさん» ありがとうございます! (2019年10月12日 12時) (レス) id: 483e5f8c50 (このIDを非表示/違反報告)
みーた(プロフ) - ちぃさん» 申し訳ございませんでした!すぐにルビをふってまいりますので少々お待ちください! (2019年10月11日 22時) (レス) id: 8487e33076 (このIDを非表示/違反報告)
みーた(プロフ) - おさるさん» ありがとうございます!更新頑張ります! (2019年10月11日 22時) (レス) id: 8487e33076 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みーた x他1人 | 作成日時:2019年9月29日 20時