【煉獄杏寿郎】貴方が死なない未来。 (ページ2)

今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:294,074 hit

序章ページ2

・

柔らかな日差しに包まれながら、杏寿郎と共にのんびりと縁側でお茶を飲む。
庭では千寿郎君が一生懸命に稽古をしていた。

「いやはや、千寿郎も腕が上がったな！」

「そうね…杏寿郎が任務でいない時も、欠かさずに稽古を行っているから」

杏寿郎と結婚し、この家で暮らすようになってから二年が過ぎた。
夫は鬼殺隊の任務で家を空けることが多い。
その度に、「大丈夫。必ず生きて帰ってきてくれる」と夫の帰りを待っていた。

不安な気持ちになる時は勿論多いが、そんなものも彼と顔を合わせればすぐに消えてしまう。

「A、もう少しこちらへ寄れ！」

杏寿郎はそう言うと、グイッと私を自分に抱き寄せた。
驚いて彼を見ると、「すまんすまん！少し力が強かったか！」といつもの快活な笑みを浮かべていて。

「杏寿郎ったら…」

クスリと笑いながら、彼の肩に頭を傾け目を閉じる。
彼に触れると、いつも胸の奥が温かくなるのが不思議だ。

暫くそのままお互いに無言でいると、彼が手を重ねてきて。分厚く大きな杏寿郎の手に、貴方が一体どれだけの人々を守ってきたのかを感じて胸がきゅっと締め付けられる。

その分だけ貴方は命をかけて刃を振るってきたのだ。私が何も出来ない間に。

「ずっと、君の傍にいよう！」

快活な声が耳に心地よい。真っ直ぐに見つめられて、思わず口元から笑みが零れた。

「私もずっと、貴方の傍にいるわ」

杏寿郎の体温を感じる。
隣に愛する人がいるのは、こんなにも幸せなことなんだ。
そう思いながら、ゆっくりと瞼を閉じその優しい感情に身を委ねる。

________私はこの時、この愛おしい日々が永遠に続くのだと、そう思っていた。

・