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〜A〜
会社員の拓真は執事の拓真と違う
私の知らない拓真がそこにいた
「殺したらダメですよ」
しれっと席を立つリリックさんに声をかけた
貴重な
死んでしまった命は元には戻らない
それだけはどんな人にも共通する
リリック「優しいね。お嬢さんは。悪党の命を心配をするなんて」
「誰だってそう思ってますよ。それと私は、命を狙われてる人を心配してるわけじゃなくて、ただ……嫌じゃないですか。自分と知り合った人が引き返せない道に進もうとしてるのに止められないのは」
リリック「止まりたくないんだよ。例え間違っていると分かっていても。
「それがリリックさんの周りにいる人を悲しませてもですか?」
リリック「はぁぁーー。お嬢さんはどこまでも私の罪悪感を煽るんだな」
スっと伸びてきた手は私の頭に触れて、目を細めて笑った
リリック「いたんだよ、私も。君が失った記憶の……Xデーとでも呼ぼうか。その日、私は日本にいたんだ」
「え……?」
リリック「君を助けたい。救うために力を貸して欲しい。そう懇願された。まぁ、詳しくは教えてくれなかったが、何があったかは察しがつく」
「ま、待って!今、何て……」
リリック「今回のお詫びに良いことを教えてあげよう。矢河家の使用人は全員が入れ替わっているんだよ。不思議だろ?何も知らない使用人を入れ替えてでも隠し通したい秘密があるってことだ」
「リ……」
人差し指を唇に当てられて喋るのを止められた
リリック「久しぶりに家に行ったら知らない人ばかりで驚いたが、1人だけ顔馴染みがいたから居心地は悪くなかったかな」
さっきから頭の中に記憶が断片的に映し出される
どれもヒビ割れていて何が映っているのかは分からない
リリック「思い出せないのは、誰かが何かをしたから、なのかもしれないね」
そんなの……私の記憶が消されたと言っているようなもの
誰に……?
使用人を入れ替えた?
そんなの私は知らない
だって私の記憶にいるのは今、働いている人達
リリック「これ以上は私の口からは言えない。ほら、分かるだろ?」
お父さんの機嫌を損ねたら不利益が生じる
リリック「お嬢さん。君は知っているはずなんだ。あの日、自分の身に何が起きたのか。時間はまだある。ゆっくりと思い出せばいい」
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まゆ(プロフ) - コメントありがとうございます!ネタが思いついたときにしか更新してないので、時間かかってしまいますが、こうして待ってくれてる読者様がいてくれると頑張れます!! (7月23日 22時) (レス) id: c462f277ab (このIDを非表示/違反報告)
礼 - めっちゃ面白かったです。続きが楽しみで仕方ありません。余力がある時に続きを書いていってくださると読者としてとても嬉しく思います。頑張って下さい。 (7月23日 22時) (レス) @page30 id: 3d2eda965f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まゆ | 作成日時:2022年12月28日 0時