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「何で鬱くんはいつも人に花を持たせるん？ 君の方が有能やろ？」
ある日の放課後、委員会の仕事で残された私たちは会話もそこそこにプリント整理を黙々と行っていた。ホッチキスの弾けるような音だけが響く教室でふと、ずっと気になっていたことを彼に問いかけた。その問いに初めはキョトンとしていた彼だったがすぐに、ふっと笑い視線を手元のプリントに落とした。
「……なんでそう思うん？」
「いつも鬱くんがおると周りの人が幸せになるなって思って」
「ふーん？」
作業する手は止めないで興味なさそうに相槌を打つ。彼の真意を確かめようにも目は伏せられたままで長い前髪が顔にかかり表情は読み取れない。
答えが返ってこず、変な質問をしてしまったと今更気づいた私は居た堪れなくなり言葉を続ける。
「体育祭も文化祭もシャオロンくんに手柄を譲ったよね？」
「手柄って。シャオちゃんのが適任やー思っただけやで」
「今日やって委員会で……」
途中まで言いかけて「しっ」と言うのと同時に鬱くんの長い人差し指が私の口元に優しく押し当てられる。やっと目が合った瞳はなんだかとっても切ない。
私の口が止まったのを確認するとスッと彼の指は離れ再び作業に戻された。
それから鬱くんは何も言わないから私も何も言えないままホッチキスの音の響く教室でお互い無言のまま作業をした。
＊
あれから鬱くんとは何事もなかったかのように平凡な高校生活を送った。変わったことといえば前よりも鬱くんと話す機会が増えたこと。
席替えで近くなったということもあるだろうけどクラスメイトを交えて談笑したり、廊下ですれ違えば軽く会話を交わしたりもした。
そして、絶えることのなかった鬱くんと女の子の噂がぱったりと無くなったりもした。
どうしたんだと周りが噂をしているのを聞いて私は漠然と好きな人でもできたんだろうなと彼の今までにないほどに優しい顔をしているのを見て思った。そんな表情ひとつで分かってしまうのは、あの日以来鬱くんを観察することが増えたからだろうか。
そしてそんな平穏な日々が続き、特に何もないまま私たちは卒業した。
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野々宮蓮花(プロフ) - 唐揚げさん» こんにちは。コメントありがとうございます！そう言って頂けてなによりです。まだまだ沢山の作品が続きますので、引き続き楽しんで頂けたら幸いと存じます。どうぞよろしくお願いします！ (2021年1月25日 20時) (
レス) id: 720637d64b (このIDを非表示/違反報告)
唐揚げ(プロフ) - どの作品も少しドキドキ？しながら読ませていただきました。ut先生オンリーということで似たような作品が並ぶのかなぁと思いましたが、バリエーション豊かで楽しかったです。 (2021年1月25日 19時) (レス) id: 6975836a4f (このIDを非表示/違反報告)
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