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孤独。そんな言葉がぴったりの仄暗い空の下、冬の凍てつく寒さが容赦なく私の体温を奪っていた。ぐちゃぐちゃになった死体の上でその血を浴びた私はだんだんと冷める返り血に震えて、このまま死んだっていいな、なんて考えるぐらいには弱っていたと思う。
寝転び真上に君臨する満月が少しずつぼやけてきて体の力が抜けていく。冬の風の音は優しくなくてそんな冷たい音だけを耳にして私は瞼を閉じた。
「…どーも、生きてますかぁ？」
風の音に混じり男の声が聞こえる。残賊か…と重たい瞼をなんとかこじ開けてその声の主を見やるとそこには満月の下、光と影を背負った色の見えない男だった。
「……ころすならさっさと、やりなさいよ」
もう体は動きそうにない。唯一の抵抗は生意気な口をきくことぐらいだ。
私の返答に驚いたように、そして興味深そうに目を細めた男が、「ふーん。噂の暗殺者はあんたなんやねぇ」と近寄ってくる。足音がすぐ隣で止まり、彼はじっと上から私を眺めていた。指先から離れたナイフを手繰り寄せようと地面に爪を立てていれば、それを見透かしたように手を取られた。
あぁ、私はこのまま殺されるのか、と諦め目を瞑る。本当に私の生きてきた人生はいつだってクソみたいなものだった。碌な死に方はしないだろうと後ろ指を指されてきたがまさかこんなに呆気ないものだとは。ハッと鼻で笑ったまま、相手の動きを待つ。
私の手を握ったままの男は、血濡れた私の頬をまるで宝物のように優しく触れて…血を拭っていく。
「…なに、して…」
「可愛い顔しとるやん。それに結構俺のタイプやし。」
彼が紅を引くように私の唇に触れて、指先で遊ぶ。人の手がこんなに温かいなんて、知りたくもない。
「ずいぶんとやんちゃしてたみたいやけど、君も女の子なんやから」
軽々と身体を持ち上げて、私は宙に浮く。今まで散々ひどい言葉を浴びせられ、時には人間の扱いすらされなかった私を、彼はただの「女の子」だとそう言った。
…その言葉が、涙が出るほど嬉しくて。
「俺と一緒に生きような」
月影にかかったその男は、へらりと誰よりも死にそうな顔をして笑っていた。
あの時、たったそれだけ。それだけの一言が、私を救ってくれた。彼が私の道標となり、彼が私の護るべき人となり、そして…彼が私の愛すべく人となったのはその日からだった。
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野々宮蓮花(プロフ) - 唐揚げさん» こんにちは。コメントありがとうございます！そう言って頂けてなによりです。まだまだ沢山の作品が続きますので、引き続き楽しんで頂けたら幸いと存じます。どうぞよろしくお願いします！ (2021年1月25日 20時) (
レス) id: 720637d64b (このIDを非表示/違反報告)
唐揚げ(プロフ) - どの作品も少しドキドキ？しながら読ませていただきました。ut先生オンリーということで似たような作品が並ぶのかなぁと思いましたが、バリエーション豊かで楽しかったです。 (2021年1月25日 19時) (レス) id: 6975836a4f (このIDを非表示/違反報告)
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