Lotus ページ9
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────沈んださくらんぼを救ってくれたのは他でもない君だった。
蕭々と降る雨がフロントガラスに打ち付けられて流れていく。濡れたアスファルトに反射する赤がキラキラと存在感を放つ。貴方がハンドルに凭れる。
『……青、だよ』
「おっと、」
彼の顔に照らされる青だけで前も見てないのにシグナルが変わるのがわかる。
貴方にはその色の方が似合っているよ。そう言ったら貴方はなんて言うだろうか。
移りゆく街頭が照らす横顔が好き。ハンドルを握るその綺麗な指先が好き。たまに私の視線に気づいてこちらに視線をよこして口角を上げるとこが好き。ゆっくりとハンドルを切るその動作が好き。信号待ちで退屈そうにハンドルに凭れる物憂いげな姿が好き。
車を運転しているだけで好きが溢れて来る。
……それなのに、もうこの気持ちは伝えてはいけないなんて。
そういえば彼と初めて会った日もこんな雨の日だったっけ。
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私と彼の出会いは三年前、いつも通りこ生活を送っていた私は何もかもが嫌になって家を飛び出した。
特に行くあてもなく煌めくネオンや街頭に照らされながら雨の中を歩いた。
そしてひとつのお店が目に止まる。何故だかそのお店だけが輝いて見えて私は迷わずバーに足を踏み入れた。
ゆったりとした音楽の中、バーテンダーのいらっしゃいませの声だけが響いた。
バーに来るような格好をしていない自分を思い出し居た堪れなくなったがこのまま何もなかったかのように出ることもできずに私は店の端っこの席に腰掛けた。
「あちらのお客様からです」
しばらく何も頼まずにいると目の前にスッと出されたカクテル。赤くキラキラ輝くお酒の中にさくらんぼがひとつ沈んでいる。
バーテンダーのお兄さんの指す手のほうに目を向けると私の対角線上、左端の席に座るお兄さんがにこりと会釈をする。長い前髪の間から一瞬見えた瞳にメガネ越しだというのに吸い込まれてしまいそうになって慌てて目を逸らす。
「ロブロイでございます。どうぞお召し上がりください」
ウイスキーと白ワインがベースのフレーバードワインだとバーテンダーのお兄さんが教えてくれる。
赤いカクテルを一口含めば口内に広がる甘い強めのお酒の味。ふわりと鼻を抜けるハーブ香りが心地よい。
「お酒、弱いん？」
ふわふわとした思考の中、左側から突然聞こえた声にドキリと肩を揺らす。
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野々宮蓮花(プロフ) - なななさん» 一緒に楽しんでいただけてとても嬉しいです。そう言って頂けて、企画主冥利に尽きます。こちらこそ最後までお付き合いくださりありがとうございました…！ (2020年9月21日 4時) (
レス) id: 720637d64b (このIDを非表示/違反報告)
ななな(プロフ) - 主催者さまはじめ、執筆を担当されました作者さま、素晴らしいお話の数々本当にありがとうございました。いつまでも続けばいいのに、と思うほどの素敵な作品しかなく胸を打たれる毎日でした。 改めまして、お疲れ様でございました！ (2020年9月21日 0時) (レス) id: 547b684aec (このIDを非表示/違反報告)
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