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⎯⎯⎯眩むような光に目を刺された。
視界は白み、脳にはズキリと鋭い痛み。酷く酒を煽った翌日と同様の気怠さが身体を重たくさせていた。
目を擦ると、窓から差し込める朝日と晴れ渡った青空が視界を埋めつくした。背中には柔いベッドの温もり。⎯⎯⎯あ、れ？いつの間に眠ったんだろうか。昨晩俺は、たしか、
｢⎯⎯⎯っ、A、！｣
弾かれたように上体を起こした。そうして辺りを見渡すと、そこにあったのは代わり映えのない本に溢れた自室だった。確かにそこにAはいたのに、花の影ひとつ、見当たらない。
消えて、しまった。
いや、あれは夢だったのかもしれない。そう、そうだ。今すぐAの元へ行こう。彼女はどうせいつものようにカラカラ、笑っているはずだから。
床に足をつけ、寝癖も直さないまま部屋を飛び出そうとした。しかし、ふ、と。机の上に倒れていた写真立てが目につき足が止まる。
(⎯⎯⎯私を忘れないで)
(思い出せなかったでしょう？)
震える指先で、写真立てを起こす。そうして姿を見せたのは、すっかり色褪せた写真だ。俺とAがふたり、笑い合う写真。⎯⎯⎯ああ、ああ。ああ。そう、そうだ。そうだ。
Aの笑顔。花の香り。揶揄う声。
もう、最後に触れてから何十年が、経ったのだろう。
｢……っ、忘れてへん、忘れてへん、から、｣
でも、確かに記憶の底に沈んでいた。何より大切で、愛おしいAと刻み歩んだあの、眩いばかりではなくともしあわせに満ちていた時間が。
あの長い夢が宝物のような思いを掬わせてくれた。君の笑顔も、香りも、声も、再び色がついてに心に戻った。寂しい思いを、させていたのだろう。ごめん、ごめんな、A。
写真の中で笑うAにそっと、指先で触れた時。開けっ放しの窓からびゅう、と風が吹きつけた。そうして視界の端にはらり、ひらり。
数枚の花弁が舞い上がる。
(思い出してくれてありがとう、鬱)
(⎯⎯⎯ずっと、愛してる)
そんな声が、風に乗って耳を撫でた気がした。
｢……綺麗、やな。おん、綺麗やわ。……っほんまに、｣
舞う花弁は白ではなく、青だった。そっと宙で摘んだ一枚に笑みを向ける。溢れて止まらない涙を、君はまたカラカラと笑って揶揄うのだろう。
君が咲かせたあの花が、きっと、見えずとも俺の心臓にも咲いている。花弁は青に色づいて、その根にある想いは⎯⎯⎯
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野々宮蓮花(プロフ) - なななさん» 一緒に楽しんでいただけてとても嬉しいです。そう言って頂けて、企画主冥利に尽きます。こちらこそ最後までお付き合いくださりありがとうございました…！ (2020年9月21日 4時) (
レス) id: 720637d64b (このIDを非表示/違反報告)
ななな(プロフ) - 主催者さまはじめ、執筆を担当されました作者さま、素晴らしいお話の数々本当にありがとうございました。いつまでも続けばいいのに、と思うほどの素敵な作品しかなく胸を打たれる毎日でした。 改めまして、お疲れ様でございました！ (2020年9月21日 0時) (レス) id: 547b684aec (このIDを非表示/違反報告)
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