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｢……今日のは、ほんまに笑えへん冗談やな。リアルすぎて腰抜かすとこやったで｣
｢だから本物だって。瞬きもできないの。困ったなぁ｣
困ってなどいない顔だった。むしろ、動揺する俺を揶揄うような。君がそんな風に笑うから俺はまだその花に目を瞑る。明日も、明後日も。Aは変わらず俺を揶揄い傍で笑うのだ、と。
｢⎯⎯⎯見て。両手が花束になっちゃった｣
やはり翌日もAは花を咲かせていた。両手には指先を埋め尽くす程の白、白、白。そうして笑っていた。幾らか覇気がないように見えたのは、薄桃に色づいていたはずの頬が花と同じく青白く見えたのは、気のせいだと思いたかった。
｢これじゃあ鬱から煙草も取り上げることも出来な、｣
｢ッええ加減にせえよ……っ！｣
｢え、｣
｢何もおもろくないねん。毎日毎日花咲かせて、俺を揶揄って、まるで病気みたいに顔色悪くして、ほんま……っ、なんにも、おもろないわ｣
｢、……ごめん｣
心臓に、目に、両手に。その花を咲かせ笑うAに思わずがなり声をあげた。自身の指先にあった煙草からぱたり、灰が落ち、それを視線で追ったAは小さな謝罪を零す。
｢で、もさ、そんなに怒ることないじゃん。この花は本物だし｣
｢……体内から花が咲くなんて、そんな病気は知らん。ないねん、いくら探したって見つからへん｣
｢病気じゃないんじゃない？｣
｢ならお前のつまらん冗談や。そうや、そうに、決まっとる｣
｢怖いの？｣
ふわり、どこか懐かしい、甘ったるい香りが鼻腔を刺す。かさかさ、頬に花が触れていた。その花がなければ彼女の指はするすると俺の頬を撫でていただろう。
｢怖い？なにが｣
｢私がこのまま花に埋もれて消えちゃうこと｣
｢は、あ？｣
｢風に吹かれて、ひらひら、ぴゅうって。花びらごと私が消えちゃうかもって、怖いの？｣
Aが、消える。⎯⎯⎯しぬ、？まさか。まさか。
｢病気かもって、調べてくれたんだよね。それじゃあ、この花の名前は分かった？｣
｢……勿忘草やろ、多分｣
｢ふふ、花丸だね｣
花言葉は
｢⎯⎯⎯私を、忘れないで｣
そう言ってAは笑う。目を細め、少し、寂しそうに。
そんな顔を見ていたくなくて、俺は花束のようなAの腕を引っ張りこんだ。そうして視界の端に舞散った真白の花弁に目を瞑り、そっと唇を重ねさせる。
俺の吐く煙の毒で、この花が枯れてまえばええのに。
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野々宮蓮花(プロフ) - なななさん» 一緒に楽しんでいただけてとても嬉しいです。そう言って頂けて、企画主冥利に尽きます。こちらこそ最後までお付き合いくださりありがとうございました…！ (2020年9月21日 4時) (
レス) id: 720637d64b (このIDを非表示/違反報告)
ななな(プロフ) - 主催者さまはじめ、執筆を担当されました作者さま、素晴らしいお話の数々本当にありがとうございました。いつまでも続けばいいのに、と思うほどの素敵な作品しかなく胸を打たれる毎日でした。 改めまして、お疲れ様でございました！ (2020年9月21日 0時) (レス) id: 547b684aec (このIDを非表示/違反報告)
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