Affect059 ページ15
米屋side
その日もオレは、チャイムぎりぎりに教室に入った。オレの後ろの席にはいつも、机に置いたカバンから筆箱を取り出す女がいて、オレよりちょっとだけ先に来たんだろうなーと毎日のように予測できた。けど、今日は。
「あれ？亜桜今日早かったのか？」
「ビンゴ。おはよ」
今日はカバンがちゃんと机の横にかかっていて、悠々とその女はスマホを触っていた。だからいつもより時間に余裕があるように見えて、オレはそう問うたのである。予想は当たった。
「めずらしーだろ、早起きできたんだと」
「へ〜」
亜桜の隣の席の弾バカが続いてそう言った。その様子は至っていつもと同じで、何も変わったことはなかったんだけど。でもなんか直感的にオレは気になったことがあって。
「？お前ら、なんかあった？」
と、発してしまった。
「…は？なんで？」
「いや、なんとなく」
亜桜が心底不思議そうにオレを見上げた。別になんの根拠も無いしこいつらの行動だって何も気にならなかったのだが、何となく空気というか雰囲気のような何かが、違う気がして。まあほとんど野生の勘みたいなもので、全然確証がないんだけど。
「別になんもねーけど？強いて言うなら……」
弾バカに、オレと亜桜の視線が集まった。
「しばらく太刀川隊でAの面倒見ることになった、ってぐらいじゃね？」
「あーそれのこと？」
いやいや、おいおい。
「はあ！？どういうことだよ！」
こいつらの中ではもしかしたら話はまとまった後なのかもしれない。けど何も知らないオレからしたら、その事実は十分驚くべき事実で。だって亜桜が昔所属してた太刀川隊に、一時的とは言えまた踏み入るってことだろ。何年ぶりだよ、それ。
「迅さんが、完全復帰のために訓練してもらえって言うから」
「…！」
オレは心のどこかで、亜桜が、もしかしたら完全に返り咲けなくてもいいかもしれないと思ってるんじゃないだろうかと、そう心のどこかでは思ってた。
けど当然踏み込めなくて。
これからボーダーとしてどうするつもりなのか、このままもうランク戦には復帰できないままでいいのか。そういうのを気にかけながらも訊けなくて。けど今の発言的に、亜桜は、前に進もうとしている。
毎日のように個人戦でやりあってた頃に、戻れるかもしれない。
「そうか…完全復帰、な」
あの頃みたいに笑う亜桜を、また見られる日が来るのかもしれない。
「なるほどな。がんばれよ亜桜」
「ありがと」
けどオレにできることは、ただそれを応援することだけ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 664人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ワールドトリガー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
亜桜(プロフ) - レイさん» ありがとうございます！過去編の方の親友と高校の親友は別人になります;;表記がややこしかったですよね！修正しておきますね〜！！ (2020年6月9日 12時) (
レス) id: 4e05bff474 (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - とても面白いです！過去編の親友の名前は高校の親友と同じ名前でいいんでしょうか？ (2020年6月8日 23時) (レス) id: b6ab3f2fc3 (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - そるとさん» コメントありがとうございます！マイペース更新で申し訳ないです;;がんばります！ (2020年5月21日 23時) (レス) id: 4e05bff474 (このIDを非表示/違反報告)
そると(プロフ) - すごく面白かったです。更新されることがあったら楽しみに待ってます！ (2020年5月21日 19時) (レス) id: 6009fd27be (このIDを非表示/違反報告)
亜桜(プロフ) - みっとんさん» ありがとうございます！がんばります〜！ (2020年2月8日 10時) (レス) id: 69aa40c811 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：亜桜 | 作成日時：2020年1月4日 1時
