iridescent clouds

freundschaft…？_kus02 ページ18

微睡みの中からは世界は綺麗に見えるといつかAは言った。
夢と現の曖昧な瞬間は、眠気の心地好さ相まってきらめいて見えるのだという。



飲みに行って疲れているのにも関わらず、布団の端に寄って隣に横になるスペースを空けて眠る彼女は普段通り律儀だ。

熟睡していては、きらめく世界など見えないじゃないか。
顔に掛かって煩わしそうな髪を掬ってやると、気が付いたかのようにふふふと笑う。

本当に、然程酒に酔ってはいなかったのだろう。
人付き合いは下手な方ではないが、職場の延長にある宴席で幹事として気を配らねばならない状況でひどく気疲れしているのは明白だ。
酔っていると本人に思い込ませて、早く寝かせてやりたいというのが本音だった。

日頃は歳相応の落ち着きがあるが、寝顔を見ると学生の頃とさして面立ちは変わらないと思う。

守ったり、手を差し伸べてやらなければならないほど彼女は弱くも未熟でもない。
友人としてそれを好ましいと感じていたというのに、あまり頼られないのももどかしく、片想いでもしているような自分の感傷が気疎い。
そんな様が好ましく、その姿勢を尊重したいのもまた事実で。

思案するのは止めて眠ってしまおうと額に口付けると、Aは前髪を揺らしてゆっくりと瞬きをした。

「眠れないの。」
「いいや、起こしてごめん。もう寝るよ。」

髪を撫でて寝かしつける様にすると、安心したように身を寄せてくる。




微睡みの中から見る世界は綺麗だという言葉が自分に向けられた言葉だと気が付くのに、本当はそう時間は掛からなかった。

白状出来てないことも、この感傷も、きっとAは気が付いている。
彼女も恐らく、思うところの全ては明かすまいとするこちらに同じ種類のもどかしさを感じているから。

見えているものが曖昧でも構わないという、彼女なりの赦しの言葉なのだろう。


それならば。
恋い慕う想いと寄り添うありったけの友情を込めて、もう一度その額に口付けた。




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額の上なら友情のキス

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