2-12 30代女性 ページ26
次の日の朝、昨日と同じようにあのアナウンサーの占いを見ていると、なんとさそり座が1位だった。
「今日、悠子さんは帰れるだろう。ここでゆっくりしているといい」
「あ……はい。……あの、本当に帰れるんですか?」
「勿論だよ、帰る時、皆必ずと言っていい程私の斜め後ろを見て驚いた顔をする。そして薄くなって消えていくんだ。私も見送ってからその方を見るのだが……何も無いんだ」
「そうなんですね……じゃあ今のうちに言っておきます。私を助けて下さり、ありがとうございました」
「いや、礼には及ばない」
あーさんは本当に人間の鑑だ、私とは大違いで、人の為に今も動いている。私はただ、皆と同じように出されたものをやって、ノルマをクリアして……まるでロボットだ。
私は、感情を消されたように思っていた。ただ仕事をやって家に帰って寝て、そして起きてまた仕事をやって……それの繰り返しだった。
「さて、今日はどうしようか」
「お話したいです、あーさんと」
「嬉しい事言ってくれるね」
そんな会話をしていた時だった、あーさんの後ろからあの黒猫が出てきたのは。
私は驚いている事だろう、そりゃそうだ、だってあの黒猫は現実世界で最後に見た生き物なのだから。ハッとしてあーさんの方を見ると、あーさんは微笑みながら手を振っていた。
「頑張ってね」
私はその言葉に上手く返事が返せたのか、自分でもよく分からない。
そこから視界が暗くなって、目が覚めた時には白い天井が見えた。先程いた洋館のような場所ではない。一目で分かった、ここは病室だ。
「悠子!」
「……お母さん」
「本当に!本当に心配したのよ!!これからまた警察から事情聴取があるかもしれないけれど……!!」
「警察……?」
「……米田」
「あれ、先輩……」
先輩はどうやら、残業帰りの時に私一人で帰らせた事を後悔しているらしい。全然大丈夫だ、そう言ったが先輩は責任を感じていた。
いつもなら、ここで私はネチネチと何かを言っていそうだ。だが、今はそんな気にはならなかった。
「……あーさん……」
「ん?どした?」
「ああいえ、……少し、夢を見ていたんです」
だが果たして、あれは夢だったのだろうか。とても夢とは思えない程に現実じみていた、世界観は夢のようであったが。
私は先程まで、あーさんと共にいたはずなのに。そう思ってしまうのも無理はないのだろう。
74人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
御子柴(プロフ) - 菜々美さん» 確かに、トリップ物で沢山の人が出てくる小説は少ないですかね……?読んでくださりありがとうございます、これからもよろしくお願い致します(´∇`) (2019年10月23日 10時) (レス) id: 4466855303 (このIDを非表示/違反報告)
菜々美 - こんな感じの小説は、読んだのが初めてだけど、とても面白く見させてもらってます! (2019年10月23日 2時) (レス) id: 179628e6fd (このIDを非表示/違反報告)
御子柴(プロフ) - グミさん» そう言ってくださるとモチベーション上がります……ありがとうございます!あーさんは憧れの存在です、更新は時折疎かになる事もあるとは思いますが、今後ともよろしくお願いします!! (2019年6月25日 22時) (レス) id: 4466855303 (このIDを非表示/違反報告)
グミ(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいてます。思わず引き込まれるような筆調と面白い内容で、私も1人の作者として尊敬しています。私あーさんのキャラや性格好きなので、これからも頑張ってください! (2019年6月25日 19時) (レス) id: 01f2b963c9 (このIDを非表示/違反報告)
御子柴(プロフ) - (名前)さん» いえいえ(´∇`)ミツバさんお元気だと誰もが気になりますよね笑 この作品には第三者目線がありません、それを踏まえて今後読んでくださると嬉しいです!これからもよろしくお願い致します!! (2019年5月16日 10時) (レス) id: 4466855303 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:御子柴 | 作成日時:2019年5月1日 0時