人には愛されたいけど鬼には愛されたくなかった。/肆【鬼滅の刃】

１４５話＊思春期可愛いかよ ページ15

蜜璃ちゃんが恐る恐る、といった様子で私の顔を見る。



仕方ないでしょ！今必死に破顔すんの堪えてるんだから！


まさか、まさか身長差二十センチはありそうなモヒカン男子に対して“可愛い”って思う日が来るなんて思ってもいなかったよね!!!






『……あれ？』




荒ぶる心を落ち着かせる為に遠くをぼんやりと眺めていると、視界に黒と緑の市松模様の羽織が見えた。


『ねえ蜜璃ちゃん、あれって炭治r「あーーっ!!! 炭治郎君だ！」ﾋｮｵ……』



鬼の速度を音速とするならば、蜜璃ちゃんはそれを超越する光速で下り坂を降って行く。

って、蜜璃ちゃんの着物の襟が走った勢いではだけて大変な事になってるよ！


「あっ気をつけてください‼ 乳房が零れ出そうです‼」


……私、何見せられてんだろ。



「聞いてよ聞いてよ〜！私今そこで無視されたの、挨拶したのに無視されたの〜！」
『あッちょい待ち、それ誤解……』



私の呟くような弁解も、炭治郎の危ない‼ という大声でかき消された。
ごめんよ、名も知らぬ思春期真っ最中のモヒカン頭クン。私悪くないから許してな。



「お風呂上がりのいい気分がもう台無し‼」
「もうすぐ晩御飯ができるみたいですよ。松茸ご飯だそうです」
「えーーっ!!! ほんとォ⁉」


私が心の中でモヒカン頭クンに謝罪している間にも問題は解決したらしく、ひとまず安心した。


「Aちゃん、早く行きましょう！」
『今行くからちょっと待って！炭治郎、また宿で会おうね！』
「ああ！」


手を振る炭治郎に背を向け、歌いながら宿に向かう蜜璃ちゃんを追いかける。
あとで歌の歌詞でも教えてもらおう。







＊＊＊





「凄いですね！俺もいっぱい食べて強くなります！」


この里に来て二度目の晩御飯を食べる私達の隣で、炭治郎が言った。

彼の視線の先には蜜璃ちゃんの前に山のように置かれた空の食器。
これでも昨日に比べれば数は少ない方だ。




「あっそうだ。甘露寺さんとAが温泉で会ったのは不死川(しなずがわ)玄弥(げんや)という俺の同期でしたよ」



そうか、あのモヒカン頭クンは玄弥という名前だったのか……って、



『不死川⁉ 風柱と血縁なの？』
「でも不死川さん弟いないって言ってたわよ。仲悪いのかしら、切ないわね」


言われてみればそっくりな顔をしていたな。
あれだけ瓜二つなのに“血縁じゃない”って誤魔化すのは無理あるぜ、実弥さんよォ……

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