人には愛されたいけど鬼には愛されたくなかった。/肆【鬼滅の刃】

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Aの夢ならAが行方不明になったあの日からよく見ている。

大抵はAが見つかる夢か、過去の思い出のどちらかだが、この前見た夢は近年稀に見る悪夢だった。





妹は戦場に立っていた。
学生服のような服を着て、歯を食いしばりながら怪我人の治療をしていた。

どれだけ叫んでも妹に聞こえることは無く、もどかしい気持ちで見守るしかできない。そんな夢だ。









「あ！思い出した！」



突然の雪翔の大声に、晴夜は思わず振り返る。



「何だよ……いきなり大声出して」
「俺の夢に出てきた狐のお面を被った二人さぁ、一人のお面には花の模様があって、もう一人のお面には傷があったんだ！」


こんな風に！と、雪翔は自分の右頬をなぞる。
晴夜はそれに何故か既視感を覚え、尋ねる。



「なぁ……その花の模様がついたお面を被った子って女の子か？ピンクの花柄の着物の……」
「そう！兄ちゃんなんでわかるの⁉ エスパー⁉」

やっぱり、と晴夜は心の中で呟いた。
それはAが鞄に常につけていたアクキーのキャラクターだ。


確か、鬼滅の刃とかいう漫画の登場人物だった気がする。



「雪翔、お前……Aの漫画の読みすぎだ」
「ええーっ？」




不満そうに口を尖らせる弟の頭を撫でながら、晴夜は赤い双眸を楽しげに細めた。

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