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それから自分がどう過ごしたのか覚えてない


ただ気付いたら仕事を終えていて

気付いたら私は夜の廊下をとぼとぼと歩いていた




「ねぇ」


また、呼び止められる

今日は二度目となるそれ

だが先程と違って今度は私を呼ぶ声に責める色合いはない




「ヴィルくん…」

「酷い顔。どうしたのよ」

手を引こうとする彼を私は咄嗟に目を捩って避けた



「ほら、私の手汚いし…」

「汚いって…労働を知る手じゃない。まぁ確かにクリームくらいは塗った方がいいわね」


そう言って尚も私の手を取ろうとする彼から私は慌てて身を引いた

ヴィルくんが眉を寄せる




「はぁ……何があったか今は聞かないであげる」


それよりアンタ、と彼は続けた




「今度のセレモニー、アタシと一緒に出ない?」


言われた言葉に私はパッと顔を上げた

パチパチと目を瞬かせる



「パーティーあるでしょ。アタシと踊らないかって聞いてるの」



ヴィルくんと、私が…?


一瞬アガった気持ちは、けれど直ぐにシュンと項垂れた





「いいよ私は…ユウちゃん誘ってあげなよ」

「……なんでよ」


低く発せられた声に俯く



「私じゃ身分不相応だもん…私にヴィルくんは勿体ないよ」


今日、後ろ指指されて漸く気付いた

…ううん、本当はとっくに分かってたこと




「…なんでアンタはいつもっ!」


ふと、彼が押し殺したような声を吐き出した





「ヴィ「なんで!アンタはいつも躊躇うの!!」」


私を遮った声は怒りに震えていた

見上げた彼の瞳はかつてない程に荒れている




「なんでいつも遠慮するの!なんでいつも諦めるの!

アンタはアタシのこと!」




一旦呼吸を置いた彼が叫ぶ




「アタシが欲しいんじゃないの!?

どうしてあと一歩の所で諦めるのよ!」



胸倉を掴まれ揺さぶられた


責めるその声に私は堪らなくなって口を開く




「欲しがったら盗られるんだもん!!」


叫ぶように言い返した私にヴィルくんが目を丸くする

私はぐしゃぐしゃの声で続けた



「喋ると殴られた!宝物は取り上げられて、飲み物は泥水だった!」


胸倉を掴む手が緩む



「無理やり犯 されて、終わったら捨てられてた


そんな汚い私なんかに…」



ポロポロと涙が零れた


ヴィルくんは何も言葉を発さない






「貴方の手は握れない…」


彼と想い合うなんて大それた夢

私なんかが見るべきじゃなかった




「……」


夜の廊下

二人の間には胸を締め付ける沈黙だけが横たわっていた

*→←*



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くらげ - 待って、、、ロスカゲートじゃない、、、、、すみませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!! (12月3日 10時) (レス) @page50 id: 09404ca91f (このIDを非表示/違反報告)
くらげ - "深淵の君"ってえ!?王子様がくるその日までのロスカゲートちゃん!!??いろんな世界線ある!?やべぇ!!!これからも応援してます!!!! (12月3日 10時) (レス) @page31 id: 09404ca91f (このIDを非表示/違反報告)
- 天才か 夜中に見て感傷に浸ってる (2023年1月10日 2時) (レス) @page50 id: af6608e558 (このIDを非表示/違反報告)
ふみ(プロフ) - ぷりんせす わんこ見たいです🥺 パスワード教えて欲しいです…作者様の作品が全部良すぎてお気に入りです。 (2022年12月19日 19時) (レス) id: ace6ee2d95 (このIDを非表示/違反報告)
みみ - ぷりんせすわんこ見たいです...🥺パスワード教えてほしいです...作者様の作品全部が神すぎて..... (2022年12月4日 15時) (レス) @page50 id: b8f7239a75 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ニノココ | 作成日時:2021年10月12日 15時

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