2.The Menders(6) ページ14
英霊が子供の睨みに引くものか。続けて追い討ちと共に胸ぐらを掴む腕を払い除けて、たったその程度で床に倒れ伏すマスターは最早赤子にも及ばぬ心持ちだろう。
「…おまえが、……それを、いうのかよぉ……」
俯いたまま。次第に床に零れ行く涙と握られる手が、なんとか弱きものか。その姿に掻き立てられるのは庇護欲しかないが、代表として来た以上あの場に居た者共の小言も含めて伝えておかねば顔が立たない。
2人きりで過ごした、誰も知らぬ7日間の間で、俺はこの男に"勝利"を貰った。
そして俺は彼に呼ばれた時から、彼の勝利の為貢献すべきと志した。
各々違えど、この男に惚れ込むかなにかして付いてきた者たちは数知れぬだろう。一体何十人が、この男の背負う物の重さを知り、助けたいと願っただろう。
子供でさえ、大人でさえ、騎士でさえ、姫でさえ、王でさえ、神でさえ、……鬼でさえ。
この男の終着点が確実な勝利であれと、幾つ命を賭しただろう。
それがこの結果なのだ。
勝利は勝利、けれども。世界の救済という戦利品の対価に、この男は初めて"己が者"を失った。
彼を支える柱が、折れた瞬間を。俺は見てしまったのだった。
この数日間と、かつて共に戦ったあの7日間で見てきたこの男の性質から
"彼はもう立つことは出来ない"と分かっていた。
それはあの作家も、金ピカの魔術師も、目敏い彼らはきっと皆。
「なあ、マスターよ。」
だからこそ俺達は彼に問わねばならない。彼に喚ばれたサーヴァントとして。
「もう、戦う必要はないのか?」
―――俺達は、お前の勝利という終幕に付き添えたのか?
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作者名:らんぱく | 作成日時:2019年11月17日 7時