社長がお呼びです。７ (ページ34)

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見てるこっちがはらはらしてくる。

「A」

お父さんが、
私の袖を引いて、
入口の方を小さく指し示す。

不思議に思って、
振り返ったら、

壁際に、
お母さんが真っ直ぐに壇上を見つめてる姿が、
見えて。

驚いてる私に、
お父さんがうなづく。

壇上の章ちゃんに視線を戻すと・・・

「本日は、
このような素晴らしい賞に、
我が社のスタッフの作品がノミネートし、
させて、・・・」

いつもより高い声で話し出した途端に噛んで。

私の方がパニックになりそう。

舞台の上の賞ちゃんと、
目が合った。

落ち着いて、って、
口パクで伝えたら・・・

章ちゃんが、
急ににこって笑ったから、
びっくり。

またまたどこぞのアイドルばりの可愛い笑顔で。

カメラのフラッシュが連続して光った。

章ちゃんが、
小さく深呼吸して、
ゆっくりと話し始めた。

「色々、挨拶を新幹線の中で考えてたんですけど。
緊張して吹っ飛んでしまったんで、
今、自分の感じてるまんまを、
言葉にしたいと思います。
デザインって、水や食料と違って、
生きてく上で必要不可欠か言われたら、
それは絶対に違いますよね。
けど、僕は、この時代に懸命に生きてる人々の、
光になれる存在や、信じてます。
僕も８年程前に、
この賞を受賞させて頂いて、
今回また、
当社のスタッフが、
同じ賞を頂く事が出来て、
大変、光栄であると共に、
運命みたいなものを感じてます。
神山くんのような素晴らしいセンスの持ち主が、
僕の会社のスタッフであることを誇りに思います。
僕の大好きな愛するデザインが、
もっと街の中に溶け込んで、
必要不可欠な存在になれるよう、
業界全体が、おっきく育って行くことを願ってます。
素晴らしい賞に恥じないよう、
インフィニティアートのスタッフ一丸となり、
精魂込めてデザインに向き合い、
精進してまいりたいと思います。
本日は誠にありがとうございました」

章ちゃんが深々と頭を下げて、
マイクを司会の人に返した。

しばらくぽかんとしてた観客から、
拍手が起こる。

私はと言えば、
章ちゃんが、あまりにカッコ良くて、
しばし、放心状態。