店長がお呼びです。

村上店長がお呼びです。１ ページ1

Aside


久々に従姉妹の葵ちゃんとランチ。


とは言っても、金欠だから、
ファーストフードのハンバーガーだけど。


大きな口開けて。

はむ。


美味しい。


食べてる時が一番幸せだ。



葵ちゃんが、


「ほんと、Aは美味しそうに食べるよねぇ」


子供見るように私に、微笑んでる。


葵ちゃんは、私よりも８歳上の２８歳で、


私がバイトをしてるクレープ屋さんの向かいの、
高級ブランドショップの店員さん。


ポテトにケチャップつけてたら。


またクレープ屋の村上店長からの呼び出しの電話が鳴り響いた。



私のバイト先の店長、村上信五。

葵ちゃんと同い年の２８歳。


いついかなる時も、
どこで何をしてても、
電話一本で私を呼びつけてくる鬼の店長だ。


あんな仏頂面で、
あんなガサツで。


可愛いクレープ屋の店長なんて。

あの顔でタピオカ作ってるなんて。


八重歯の笑顔で、


「いらっしゃいませ」


言ってるなんて。


似合わな過ぎ。


でも、私以外の人には、
案外、優しいんだよなあ。

特に、綺麗な大人女子には。

いっつもデレデレしてる。


それが、また悔しい。


「はい、
今、手が離せません」


いつも、そう電話に出る事にしてる。


「出てる時点で手は離せとるやないか。
なあ、今日な、
裕太が風邪引いてんて。
来られへんねん。
代わりに、A、お前、出てくれ」


「私は便利屋じゃありません」


「どうせ暇やろうが」


人を年がら年中、暇してるみたいに。


「暇じゃないもん。
今、ハンバーガー食べてるの」


「なんや、飯食うとるだけやんけ。
それ食べ終わってからでええわ」


「ダメ。
デートだから」


嘘ついたら、しばしの沈黙。


すぐに、


「かっかっかっ。
もうちょいましな嘘つけや」


豪快な笑い声が聞こえてきた。

受話器越しなのに、耳をつんざく、でっかい声。


「どうせ、葵ちゃんと一緒やろ？
葵ちゃんの店、今日、定休日やもんな」


ばれた。

なんでなんだ。


「葵ちゃんも連れて来てくれ。
ちょうど話あるねん」


電話はぶちっと切られた。


くそぉ。


絶対にクレープ奢らせてやる。

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