店長がお呼びです。

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葵ちゃんは、行かないって言うと思ったのに。


「信ちゃんが来いって？
用事って何だろ」


不思議そうにしてるけど、行くって。


胸がざわってなった。



村上店長は葵ちゃんに気がある。

いつか落としたいと、
きっと日夜、妄想してるに違いない。


隠してるつもりっぽいけど、
誰の目から見ても、
一目瞭然だ。


葵ちゃんが、
あのガサツな村上店長を、
どう思ってるかは知らないけど。


「A、じゃあ、行こっか」


そう言って、葵ちゃんが立ち上がる。

それだけで、豊かな胸がふるふる揺れた。


夏だから、薄着してて、やけに目立つ。


対して、私のこの貧相な、
寄せて上げてなんちゃってＢカップの胸ときたら。


村上店長に子供扱いされても仕方ないのかな。


今月、ハタチになるのに・・・


女としてなんて、全然、見てもらえてない。








クレープ屋に着いたら、
長蛇の列が出来てて。


村上店長が一人で、
なんとかさばいてはいるものの。


「ちょっと、このクレープ、歪じゃない？」

「アイス、溶けてるんだけど？」


お客様からクレームの嵐が起きている。



手先が、思いっきし、不器用なんだよね。

で、なんでこんな仕事してんだ。


「おお、Aっ。
来てくれたんか」


私を崇めるように見てる、
トイプードルのような、丸いくりくりの目。


憎めないんだよなあ。


普段のあの、えらっそうな、
どSな態度も許してしまう。


ダメダメ。


そんな事じゃ、この男の思うツボじゃん。



ひたすらクレープ焼いて、
タピオカ入れて、
ソフトクリーム作って。


怒涛のような一時間が過ぎた頃。


やっと一息。


「なんとか捌けたな。
助かったわ。
暇なフリーター雇っとくと便利やな」


この一言が余計だ。


「クレープ、奢ったるわ。
葵ちゃんも食べるやろ？」


でも、その一言で、機嫌直しちゃう単細胞な私。







お客さんいないし、
村上店長が店番しててくれるし、
奥の休憩室で、
のんびり。


クレープ食べ終わって、ハッとした。



こんなとこでぼんやりしてるうちに、

葵ちゃんと村上店長は、
二人で親密そうに話してるじゃん。


時々、二人で内緒話をしてるの知ってる。


私には秘密の。

大人の話。


つまんないの・・・


チケットらしきものを渡してたの、見えて。


つい。


「そのチケット何？
二人でデート？」


聞いちゃった・・・


いじけてた声になってたかも。

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