第百五十六話 ページ7
「少し、考えてしまっただけです」
「考えたって……何を?」
「私が、これからどうしたいか」
そんな言葉が私の口から出るのが意外だったのだろう、先生は目を瞬かせた。
ぎしりとベッドを軋ませながら座りなおし、改めて私を真正面に見据える。
「……大丈夫か?」
「やだな、変なことじゃないですよ。真面目に、これからどうしようか」
どうやって、この逸る気持ちを押さえつけるか。
「悩みがあるんなら、聞くぞ」
「うーん、先生に相談しても意味ないかも」
「……そうか、無駄に傷つくな」
「ふふ、冗談です」
くすくすと肩を揺らすように笑うと、先生はもう一度私の頭を撫でた。
「何でもいいが、ちゃんと話せる相手はいるんだろうな。知崎でも……英語部のやつらでも」
「はい。でも、自分でもじっくり考えてみたくて」
「お前がそうしたいんなら俺はとやかく言わないが……心配なんだよ。お前は、頭の中で考えて、頭の中で結論付ける奴だからな」
「よく知ってるんですね、私のこと」
「伊達にお前を一番見ちゃいねぇよ」
どくん、と鼓動がひときわ大きく跳ねる。
そうやって彼は、いつだって爆弾を落としていく。逃げ場をなくした私を弄ぶように、だけど同時に無意識に。
貴方だけしか、見えなくなるように。
「お前は「しっかり者」なんかじゃない。ただの17歳の女の子だ。迷いも間違いもする、普通の、しっかりなんか全然してないいたいけな未成年だ」
「……!」
「好きなだけ間違えろ。帰り道は俺らが用意してやる。お前が立ち止まったらいつでもそこにいてやるから」
「……はい」
少しだけ、喉が締まったように苦しい。
彼は、だれもが思う以上に生徒を見ている。私を、理解してくれている。
そんな彼のやさしさが、残酷なほどに息苦しい。真綿で締め付けられるかのように、私をじわじわ支配していく。
彼は、笹塚 拓虎はひどい人だ。
だから、困らせたくなったのだ。きっと、理由は、
それだけで。
「……じゃあ私、今から間違えます」
先生が目を見開く。そんな貴方の表情も愛おしい。
ううん、貴方の声も、瞳も、笑顔、手、貴方を象る全てが。
そんなに人の気持ちを汲むのがうまいなら
そんなに簡単に私の考えを読んでしまうのなら
いっそ捧げよう 曝け出して見せよう
投げつけてしまおう ぶつけてしまおう
思うがままに
この想いを
「私は、」
だから、
気づけ
受け止めろ
伝われ
理解してしまえ
私は、
貴方に恋をしている。
「――笹塚先生のことが」
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始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - ステラさん» うわー嬉しいです!幸せだと言ってもらえることこそが幸せです!本当に励みになります!本当にありがとうございます!! (2022年2月5日 23時) (レス) id: 5d704cea99 (このIDを非表示/違反報告)
ステラ - 面白すぎて最近読み始めたのにもうここまできちゃいました!!!めちゃくちゃドキドキしてます!!素敵なものが読めて幸せです! (2022年2月2日 23時) (レス) id: 3475edfef8 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - 彩華さん» ツボ!!!!!うれしい!!!!!!更新遅くて本当に申し訳ございません。励みになります。頑張って更新します〜!! (2021年11月20日 18時) (レス) id: aebfacbb01 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - Amamiyaさん» ありがとうございます!亀更新にもほどがありますが、完結させず放置することは絶対ございませんので、たまに覗きにきてやってください…!応援、励みになります! (2021年11月20日 18時) (レス) id: aebfacbb01 (このIDを非表示/違反報告)
彩華 - やばい。ツボすぎます!一気読みしちゃいました!更新頑張ってください! (2021年4月1日 22時) (レス) id: da4daeacca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:
作成日時:2019年5月19日 17時