第百三十五話 ページ36
あたりの日はどっぷり暮れて、そろそろ帰るかと先生が切り出した。
少しだけ残念で寂しかったけれど、これ以上楽しい思いをすれば歯止めが効かなくなるので、私は利口にそれに従った。私にはこのキーホルダーと写真、そして思い出だけで十分だ。
「今日は、本当にありがとうございました」
「ん？ あぁ、いや、こちらこそ。っていうかお前おごらせてくれねぇんだもん」
「おごらせませんよ。申し訳ないですし……キーホルダーと胡桃へのお土産は頂いちゃいましたけど」
「そんなもん遠慮すんな、もらっとけ。俺は稼いでるんだよ」
に、と先生は人懐こそうな笑みで笑う。
うーん、私もバイトしたいな。カフェとかで。
「それでは、また明後日、学校で」
「あ、おう……」
頭をぺこりと下げると、先生は少しだけ戸惑ったような声を上げた。
きょとりと首をかしげては先生を見上げると、その表情もどこか迷っているようで。
家の最寄り駅はこの時間はそこそこ会社帰りの人で込み合っていて、あまりこんなところを見られるのは良くないと思うんだけどな……。
「いや、送っていく」
「え、いいですよ、別にここからすぐですし」
「……送られとけ」
遠慮すれば、不服そうな顔で先生は私の腕を引いて歩き出す。
有無を言わさぬ彼の様子に、私は黙ってついていく。触られた部分が熱いのはもはやいつものことなので、できるだけ無視しようと努めた。
「……今夜は冷えるな」
「もう夏なのに、変ですよね」
「まぁ蒸し暑いよりはましだけどな」
そんな他愛のない話をしている間も、握られた私の手首は離されない。
ようやく離されて、自然な距離で肩を並べて歩き始めたのはおそらく学校のそばを通りかかったときだろう。流石に先生もそこまで迂闊ではない。週末の夜とはいえ、学校の関係者がそばにいないと確定できるわけではないからだ。
「次のイベントはなんだったか」
「……あ、委員会のミーティングでは、そろそろ文化祭の準備が始まるみたいです」
「へぇ！ 久しぶりだな。規模って大きいのか？」
「久しぶりって、先生のところではないんですか？ ……えっと、そこそこ大きいんじゃないでしょうか。親はもちろん、他校や一般客も入れますし」
「俺の大学ではないんだよ。日本には大学祭とかもあるのにな」
残念そうに先生は笑う。もったいないな、一年間の行事の中で文化祭って一番楽しい気がするのに。
「去年は何したんだ？」
「……コスプレ喫茶です」
苦い思い出の話はしたくない。
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始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - みっちゃんさん» ありがとうございます！これからもバンバン頑張ります！一気に読んでくださってうれしい…これからも何卒よろしくお願いいたします！！ (2019年5月11日 19時) (
レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
みっちゃん - このお話大好きです！一気に読んだんですけどすっごい楽しいです！これからも頑張ってください！ (2019年4月4日 2時) (レス) id: b4edfa4067 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - あだ名がンゴって…さん» うわー！ありがとうございます！そういっていただけただけですごくうれしいです。コメント励みになります。これからも頑張らせていただきます！ (2019年4月1日 21時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
あだ名がンゴって… - 初コメ失礼します。あなたの文才、ください（切実）めっっっっちゃ好きですもうなんなんですか大好きです。更新頑張ってください！！！ (2019年3月31日 11時) (レス) id: d0cbd630d9 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - セツナさん» うっありがとうございます（泣）尊敬に値するようにもっと文才磨きます！ゆっくり亀さんに呪われていますが頑張って更新させていただきます！ (2019年1月9日 22時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：∧∧ﾈｺﾐﾐ∧∧ | 作者ホームページ：
作成日時：2017年6月25日 13時
