第百二十八話 ページ29
「お疲れー！」
「じゃあなー」
夜9時になって、先生がお開きを告げた。流石にそういうところはしっかり先生をやるらしい。
不完全燃焼ではあったけれども、みんなすごく楽しめたようで嬉々として足取り軽く帰っていく。
私も途中で千佳と別れ手を振って帰路についた。
家では暁と胡桃がテレビを見ていることだろう。興奮が少し忘れられない。スキップ調になってしまう足を頑張って抑える。いけない、不審者に思われてしまう。
暗闇に包まれた街中でいろんな人とすれ違う。
すでに酔いつぶれている人をできるだけ避けて、居酒屋に誘おうとするキャッチをあからさまに避けて、些か真っ直ぐではない足取り。耳に入れたイヤホンから聞こえる音楽はお気に入りのバンドで、さっき千佳が歌っていた。思わず口ずさむ。片耳は外しているから街中の喧噪と音楽の伴奏がミスマッチだ。
その時、ぐっと私の肩を思い切り掴む感覚がした。
びっくりとした私は思わず身構え、その手を弾き飛ばすように振り払った。
「なっ……ぁ、」
「悪い、邦月。俺だ、俺」
声を荒げようとした私をなだめるように声をかぶせてきたのは、先生だった。
瞬時にはぁ、と小さく緊張のほどけた吐息を吐く。流石にびっくりした。
「……いきなり肩を掴むのやめてくださいよ……このご時世下手すると警察沙汰ですよ」
「悪い、でも声はかけたんだぞ？」
「え、嘘……全然聞こえませんでした」
「お前イヤホンつけてただろ」
イヤホンをつけていないほうの片耳を見せると、先生はその顔をきょとんと瞬かせた。
まぁ先生はイヤホンを付けていた側から声をかけてきたんだろうし、街の喧噪にかき消されて聞こえなかったのだろう。
「何か用ですか？」
「いや、送ってく」
「別にいいですよ？ もうすぐそこですし」
「俺が送りたいんだよ」
ドキリ、と鼓動が跳ねる。
それを悟られないように、私は小さく唇をかんで渋々頷いた。こんなことで動揺してしまうなんて、私もまだまだだ。
「……タイミング良すぎる気がしますけど、ずっと後ろにいました？」
「正直知崎にばれるとやばそうだったから、少しな」
「……ストーカー」
「うるせぇ」
ぐりぐりと旋毛を指の関節で押される。
痛くはないけどおかしくて、やめてくださいよ、と嫌がりながらついつい笑ってしまう。
きゃっきゃとはしゃぎながら笑う私と先生は、傍から見たら兄弟に見えたりするのだろうか。
酔っ払いとすれ違う時、肩を掴んで引き寄せてくれた。
それだけで、もう。
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始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - みっちゃんさん» ありがとうございます！これからもバンバン頑張ります！一気に読んでくださってうれしい…これからも何卒よろしくお願いいたします！！ (2019年5月11日 19時) (
レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
みっちゃん - このお話大好きです！一気に読んだんですけどすっごい楽しいです！これからも頑張ってください！ (2019年4月4日 2時) (レス) id: b4edfa4067 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - あだ名がンゴって…さん» うわー！ありがとうございます！そういっていただけただけですごくうれしいです。コメント励みになります。これからも頑張らせていただきます！ (2019年4月1日 21時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
あだ名がンゴって… - 初コメ失礼します。あなたの文才、ください（切実）めっっっっちゃ好きですもうなんなんですか大好きです。更新頑張ってください！！！ (2019年3月31日 11時) (レス) id: d0cbd630d9 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - セツナさん» うっありがとうございます（泣）尊敬に値するようにもっと文才磨きます！ゆっくり亀さんに呪われていますが頑張って更新させていただきます！ (2019年1月9日 22時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：∧∧ﾈｺﾐﾐ∧∧ | 作者ホームページ：
作成日時：2017年6月25日 13時
