【3】サド教師とツンデレ生徒【名前変換オリジナル】

第百十二話 ページ13

「……笹塚先生」
「先生、生徒をかばうとは感心しませんな」

もう喋る気がないと気付いたのかすぐに私の口は解放され、代わりのその手はぽん、と軽く私の後頭部を叩いた。

「そうは言われても、彼女は私が担任している生徒なので……」

困ったように笑う先生を見上げる。
っていうか私って言った？キモイ。いつも唯我独尊の「俺」で一人称通してるのに。
そんな私の思考を読み取れでもしたのか、ちらりと先生はこちらに視線を寄越してからまた生活指導を見る。

「笹塚先生、あなたにも一言言わせてもらいますが、今回の事態は言語道断ですよ。どういう教育をされているんです？」

生活指導の矛先が今度は笹塚先生のほうに向き、職員室がざわつく。
これはさすがにやりすぎだとほかの教師も思い始めたのだろう。そうでなくとも、先生はこのルックスからほかの女性教師の好意だって集めているわけだし、彼女らの反感もかったことだろう。
かくいう私も頭に血が上りつつあり、こぶしを握り締める。肩に先生の手が置かれてなければ、すかさず反論しているところだった。

「お言葉ですが、私のクラスの生徒たちはみな心優しく、賢く、有望な生徒ばかりですよ」
「その有望な生徒が此度の事件を起こしたようですが？ 教師経歴のない貴方が私に反論しないでいただきたいですな。第一ここに置かれているのだって、校長のご厚意があってのことなのです。感謝の気持ちを忘れずに、」
「忘れたことはありませんよ」

……そうだったんだ。
笹塚先生って、校長先生のおかげでここにいるんだ。知り合いか、何かかな？

先生は生活指導の言葉を遮るように、言う。
物静かな笑顔を携えたまま、相手の怒りを落ち着けようとするかのように平坦な口調で。

「一日たりとも、感謝の気持ちを忘れたことはありません。この高校に来られて、皆様と知り合えて、そして将来光ある道を歩む生徒のサポートができて」
「む……」

そんな先生の、まるで教師の模範のようなセリフを聞いて、生徒指導も口をつぐむ。何も言い返せなくなってしまったみたいだ。
気まずそうに彼は自分の後頭部を指でさすりながら、続けた。

「わ、わかっていればいいのです。邦月、そろそろ授業が始まるだろう。さっさと行きなさい」
「はい」

引き留め無駄な説教を始めたのは貴方ですけどね、と心の中で毒づく。
踵を返して職員室の間を縫い、入ってきた扉から出て後ろ手で扉を閉める。
先生が来なかったらさらに問題児になるところだった

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