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第五十四話 ページ5

「……え?」

最初に口に出来たのは、確かにその一言だけだった。
言葉ですらないそれは、私の心からの困惑を確かに表している。

「思えば俺も、一緒に行く相手がいないんでな」
「……でも、これは先生が優勝してもらった景品じゃないですか」
「使わなければ宝の持ち腐れだろ?だから、お前にやろうと思ってな」

差し出されたままの二枚のチケット。
だけどそれを受け取れるほど、私は図々しくない。
むしろそれを嬉々として受け取れる方がおかしいのではないかと思う。
あ、千佳なら受け取る。

「でも、どうして私に……」
「誰かに譲ろうと思って一番最初に思い浮かんだのがお前だった。 お前なら、仲のいい知崎だのを誘って行けるだろ?」
「……千佳って、見た目に反して友達とそういうところに行かないんですよ」
「……詐欺だろ」

先生がそう言うのも無理はない。
私も初めてそれを知った時は、全く同じことを思った。

チャラチャラしていて、明るくて典型的女子!という印象の千佳。
だけど実は可愛い類のものなどはあまり好きなのではないそうだ。
男たちを騙すためにココアなど女子っぽい飲み物を飲んだりすることが多いが、本当は無糖コーヒーだとかが好きなんだそうだ。
心から詐欺だ。

「じゃああれだ……家族は?お前兄弟がいるだろ?」
「兄が一人に妹が一人……これじゃあチケットは足りませんよ」

そう言ってしまえば、先生は考え込んでしまう。
私も考えては見るが、一緒に行く相手が本当にいない。
こういう時、千佳ならどうするのだろうか。

喜んで受け取って……それから、……

「……あ」
「ん?」

目の前に立っている人を見つめてから、気まずくてすぐに目を逸らした。
……いや、それはアリなのだろうか。

「どうした、アテがあるのか?」
「……いえ、えっと……」

千佳からアイディアを貰うとは。
いや、でもこの行動はまるっきりそこらじゅうの女子高生の思考回路と同じじゃないのだろうか。
あぁいう人たちと同じレベルには落ちたくない……。

でも、このチケットはもともとは先生のもので、それが最善の選択肢だというのならば……

しょうがないの、だろうか。

私は肩を落とし、深呼吸をした。
先生はきょとりとした顔で私を見てくる。
そんな先生に向かって、私は手を差し出した。

「チケット、いただきます」
「ん、平気なのか?」
「はい、ください」

私の手の中にチケットが収まる。
鼓動がうるさい。言え、言うんだ。

「一緒に、行きませんか」

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設定タグ:ツンデレ , ドS , オリジナル   
作品ジャンル:ラブコメ, オリジナル作品
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始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - ayakaさん» Rの要素ございました? (2020年6月25日 14時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
ayaka - [R]つけてください (2020年6月24日 20時) (レス) id: 6bf9ec98ce (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - ゆうきさん» あぁああうれしいです!全力できゅんっと来るような描写をさせていただきます…無駄に多く長い小説をすべて読んでいただき感激のあまり…いや本当に感激です!(語彙力が足りない)ありがとうございます、頑張らせていただきます!! (2017年6月25日 13時) (レス) id: d48db6c0c1 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - いか糖さん» 本当に長くなりそうなので飽きないって言ってくださってうれしいです……!ワンパターン・テンプレばかりの小説だというのにそんなことを言って下さるなんて…!頑張ります!! (2017年6月25日 13時) (レス) id: d48db6c0c1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - コメント失礼します!先生かっこよすぎませんか!?一話から続けて読んでいますが、先生の一つ一つの動作にキュンキュンさせられてます!こんな先生本当にいたらいいのにな…更新がんばってください!楽しみにしています! (2017年6月11日 15時) (レス) id: 6c9139a3b2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:   
作成日時:2014年11月14日 20時

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