【2】サド教師とツンデレ生徒【名前変換オリジナル】

第七十五話 ページ26

人生は、歯車と同等だと私は思う。
基本的どんな人生を送ったとしてもだいたいは噛み合って、錆びて動かなくなるまで人生は続いていく。
一人の動きが周りに影響して、周りはまた周りを影響して、だからこそ私たちは互いを影響し合って生きている。
だからこそ、私たちは「一人では生きていけない」という幻想にも似たような事実が溢れた社会に生きている。

だけど、歯車が必ずしも噛み合い続けるとは限らない。

時計が動かなくなるように。
歯車が止まってしまう時がある。

それは、歯車がずれ始めてしまったとき。
一つのずれは周りに影響を及ぼし、ずれがずれを引き起こす。

だけど時計とは違い、私たちの社会はずれ続けることはない。
誰かがそのずれを止め、新しい歯車として影響を及ぼし、すべては元通りになる……ように思える。
だけどずれ始めた歯車がもとに戻ることは、ない。
小さなずれが生じたまま歯車は強制的に回り続ける。やがて年老い、錆びた歯車が取り除かれても、そのずれが取り除かれることはないだろう。
だからこそ、私たちの社会はこんなに欠陥しているのだと思う。

さて、私は何が言いたいのだろう？
答えはただ一つしかないようにしか思えなかった。

「ずれた歯車はもう、戻らない」

うわごとのように呟く。
たった今私は、自分が起こしたずれを実感していたところだった。
そしてそれがもう二度と戻ることはないことも、理解していた。

「姉御、よろしくお願いシャース！」
「委員長、ありがとう〜」

教卓の前にたった私を見て、席に着いたままのたくさんの生徒が口々にお礼や挨拶を告げていく。
こんな風に教室の前にたって先生の代わりに授業をしたことは一度や二度ではない。
だけどこんな気分で誰かに教えることは初めてで、ちゃんとやれるのか不安になるどころの話ではなかった。

「じゃあまず、歴史の復習。 20世紀アメリカの歴史についてだから、そんなに暗記が大変な訳じゃないはず。 その頃のアメリカは世界第二次戦争から多大な利益を儲けてたから……」

自分がまとめたノートには、分かりやすく説明しなきゃいけない要点が書かれてある。
読み上げると同時にどうやってそれを言葉にするかを頭の中で考える。
こう見えてあまり頭の回転は速くないから、ゆっくり喋らなきゃいけない。

教室を見回しながら説明していると、生徒全員が熱心にノートをとってる。
普段の授業態度がこれなら、余裕で赤点回避なのになぁ。
ふぅ、と私は憂鬱な息を吐く。

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