第七十話 ページ21
もう、限界だ。
そんな自分の感情に気付いたら、あとはもうすぐだった。
渾身の力で私は先生を突き飛ばし、彼が二歩三歩とよろめいている隙に扉を押し開けて指導室を飛び出した。
誰もいない廊下をリレー選手も目じゃないくらい全力疾走して、自分の教室へとたどり着く。
そして何も考えずに、勢いに任せるまま思い切り教室の扉を開いた。
「よし、今日はここまで――……うわっ、邦月?先生どこの族の襲撃かと思っちゃったよ」
「す……すみ、ませ……」
ぜーはー、と体全身を使って呼吸をする私。
そしてそんな私をまるで珍百景でも見ているような目で見るクラスメイト達。
確かに、皆の「姉御」と呼ばれていていつもサバサバとしていて時に冷静な私がこんなに取り乱すのは初めてかもしれない。
でも……、でも……ッ!
あれは卑怯だと思うんだ。っていうかあれで取り乱さなかったら人間じゃないと思うんだッ!
思いだすたびに顔を真っ赤にする私を置いて、先生はそそくさと教室を出ていった。
結局私は四限、丸々午前中の授業を休んでしまったというわけだ。
次に待っているのはお昼じゃないか。学校に来て最初に受けた授業(?)がお昼休みってこれ如何に……。
「奏音〜」
「お母さんお父さんついに貴方方の娘がついに不良に走りました……」
「何言ってんのぉ?」
きょとんと首を傾げる千佳に、一から説明する余裕がない。
っていうか出来るわけがない。
たとえ本気ではないとはいえ、笹塚先生は千佳が目をかけた人……まさか、あ、んな、こと、があったなんて言ったら、きっと私は千佳に殺される。
「何でもない……」
「そぉ?あ、でも……」
言いかけて止まった千佳に不審に思いながら、私は首を傾げ千佳を見上げる。
千佳はどことなく嬉しそうな顔をして私を見ていた。
「悩みは解決したみたいだね。 良かったねー、奏音」
「……千佳」
持つべきは友、というべきだろうか。
時折彼女の能天気ぶりにイラッと来ることがないとは言えない。
でもやっぱり彼女はいい子で、だから私は彼女のことを親友って呼べるんだろう。
「さっ、お昼買いにいこー!」
「うん、そだね」
そういえば先生は、私の作ったお弁当ちゃんと食べているんだろうか。
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始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - ayakaさん» Rの要素ございました? (2020年6月25日 14時) (レス) id: 6c149362e0 (このIDを非表示/違反報告)
ayaka - [R]つけてください (2020年6月24日 20時) (レス) id: 6bf9ec98ce (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - ゆうきさん» あぁああうれしいです!全力できゅんっと来るような描写をさせていただきます…無駄に多く長い小説をすべて読んでいただき感激のあまり…いや本当に感激です!(語彙力が足りない)ありがとうございます、頑張らせていただきます!! (2017年6月25日 13時) (レス) id: d48db6c0c1 (このIDを非表示/違反報告)
始まりの神:トワイライト・ジェネシス(プロフ) - いか糖さん» 本当に長くなりそうなので飽きないって言ってくださってうれしいです……!ワンパターン・テンプレばかりの小説だというのにそんなことを言って下さるなんて…!頑張ります!! (2017年6月25日 13時) (レス) id: d48db6c0c1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうき(プロフ) - コメント失礼します!先生かっこよすぎませんか!?一話から続けて読んでいますが、先生の一つ一つの動作にキュンキュンさせられてます!こんな先生本当にいたらいいのにな…更新がんばってください!楽しみにしています! (2017年6月11日 15時) (レス) id: 6c9139a3b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:∧∧ネコミミ∧∧ | 作者ホームページ:
作成日時:2014年11月14日 20時